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日本人飲食店オーナー団結:広がる「助け合いの輪」

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新型コロナウイルスに打ち勝つ

外出禁止令で人影と路上駐車する車が消えた小東京の2街

小東京で営業している多くの店が、持ち帰りと配達の大きなサインが掲げられている

 新型コロナウイルスの感染拡大防止策としてカリフォルニア州が外出禁止令を出し市民は不要不急の外出を控え、にぎやかだった小東京は一転、昼夜閑散としている。日常生活や経済に多大な影響を及ぼし、営業を制限されたレストラン業界にとっては深刻な問題だ。店内飲食は禁じられているが、辛うじて持ち帰りと配達は可能なため「生き残り」をかけた戦いを続けている。「従業員を守る」「地域とひいき客、家族のため」「コロナに打ち勝つ」などと、約30人の日本人オーナーが団結し、情報を提供、意見を交わし模索して難局を乗り越えようとしている。

人通りがまばらなジャパニーズ・ビレッジプラザ。コロナウイルスの感染予防のためマスクを着用する人々が増えている

  「米国日系レストラン協会(JRA、約220会員)」の会長に先月就任したばかりの増田堅太郎さんは、飲食業に対する制限が出るとすぐさま役員を集め、電話による緊急会議を開いた。非常な事態として、日系食品メーカーなど賛助会員に寄付の援助を求めることを決め、うまく進めばその資金を活用して破産する恐れがある小さな店から順に弁当を注文し、老人ホームなどに届けるという。JRAはまた、地域ごとで持ち帰りができる店のリストを作成し、ホームページで公開している。増田さんは「おいしい日本食をこれからも提供していきたいので、みんなでサポートしてほしい。電話で注文して、家に持って帰って食べてほしい」と協力を求めている。
 増田さんは、会員、非会員を問わず、主にサウスベイ地域で営業する日本人オーナーに「助け合おう」と団結を呼び掛けた。情報交換には、無料アプリ「ライン」でグループを作り、朝からやりとりをしている。

持ち帰り用のたこ焼きを作る「たのた」の従業員。後方が柴谷さん

 グループの輪は日に日に広がり、店のオーナーや幹部のみならず、飲食関連のネットワークを生かし加わってもらった日本人の有名ブロガーに助言を仰ぎ、日本語雑誌「ライトハウス」と日本語ローカル情報サイト「びびなび」は、営業している店にホームページ上での掲載を申し出た。こうした大きな協力に対し、従業員の職の確保と地域での飲食サービス、家族の扶養などを守らなければならない立場のオーナーたちは、わらをもつかむ思いだ。涙が出るほどうれしい、などと恩に着る。
 増田さんによると、各オーナーは、従業員の削減を余儀なくされ、心を痛めながら店を必死に守っている。「日本食店と日系コミュニティーを助けて下さい」と協力を呼び掛けている。
 増田さん自身は、「神楽」4店と「TOT(定食屋オブ東京)」1店の和食店5店を持つ。規制前は店内飲食だったが、持ち帰りと配達に切り替えた。弁当メニューを充実させ、宅配は代理サービスの「ウーバーイーツ」「ドアダッシュ」「グラブハブ」などを初めて取り入れた。持ち帰りの客に感謝の意を込めて、仕入れた野菜やコメ、パスタなどを原価のわずか1ドルで販売するなど急きょ、「八百屋」の業務も始め「ほそぼぞとでも必ず続ける」と固く誓った。「負けないで」というポスターを作り店内に掲げ、それを見た客から「Nice. Stay Strong.」と励まされ「うるっときた」と、気を取り直したこともあった。

持ち帰り客に商品を手渡す、たこ焼き店「たのた」のオーナーの柴谷健雄さん

 1街に建つ櫓のすぐ隣りで、たこ焼き店「たのた」を営む柴谷健雄さんは、広島風お好み焼き店の店先に店を構える。コロナウイルスの影響について「うちは元々、トゥー・ゴーをメインにやっていたけど、すごく大きい。人がリトル東京に来なくなったので、買って買える人も少ない。ここまで人が外に出てこないと影響は大きい」と嘆く。これまでは、フードトラックとケータリングスタイルで営業を続けていたが、2年前に初めて出店した。1週間ほど前に開店2周年記念を迎えたというが、「すっかり忘れていた。それどころではなかった」と、コロナの影響による対応に追われていた。
 従業員はパートタイムを自宅待機させ、フルタイムはできるだけ仕事を与えようと店を開ける決心をした。「少しでも給料を払いたいけど、その売り上げもないと店を開けていても、どんどん赤字になっていくので難しい」と窮状を訴える。「(今の客入りなら)もうかることはまずないので、できるだけ出費を抑えて何とか従業員の確保を維持することが今一番の課題」と述べた。これまでの愛顧にされた顧客のためにも営業を続ける意志を示した。【永田潤、写真も】

ランチ時に持ち帰りの客が来店する増田さんが経営する小東京の「神楽」


OCの和食店も苦戦
悲鳴上げる日本人従業員

 「月曜日には客足も落ちて、いつもなら20〜30ドルもらえるチップが、たった6ドルだった」と話すのはオレンジ郡の、ある日本食店の日本人従業員。「追い打ちをかけて店内飲食禁止令が出て、全員が自宅待機を言い渡された」と困惑の様子を語る。「持ち帰りと配達だけで営業が行けるか、店主とマネージャが2〜3日様子を見ると言っているが、そうなったとしても呼び戻されるのは一部のすしシェフ、キッチンと電話応対の数人のみ。ホールのサーバーは失業手当を申請するしかないが、給付には上限があるので収入は激減する」と憂慮する。
 「普段から持ち帰りの注文は多いので、完全休業までにはならないだろうが…」と話していた通り、その後、営業は続けることになったそうだが、出勤日は半分に減ってしまった。店としても、これまで利用していなかった「ドアダッシュ」ほかの有料配達サービスを検討するなど努力するようだが、「早く元に戻ってほしい」と頭を抱える。
 カジュアル系の飲食店はまだ持ち帰りと配達にシフトできるが、高級店の場合はもっと深刻で、「営業が止まれば店舗の家賃や従業員の福利厚生費用などの支払いで徐々に首が締まる」と悲鳴を放つ。
 午後7時、いつもはにぎやかな小東京の街角がひっそりとしている。「OPEN」のネオンが寂しげに点滅するガラス戸の向こうには、椅子をテーブルの上に上げたガランとした店内が見えるが、その奥のカウンターでは必死に持ち帰りの営業を続ける従業員の姿がある。
 ロサンゼルス郡の参事は営業規制の会見の中で、このような状況下でもローカルのスモールビジネスを何とか助けられるように、市民も協力してほしいと話していた。小さなひと言だが、行政もコロナウイルスの感染拡大と必死に戦う中で、犠牲になるビジネスや人々がいることを心に留めている。配達を注文したり、業務再開後の予約を入れたり、ギフト券を購入したり、できることがあれば率先し、いつも利用する日系コミュニティーのスモールビジネスに思いやりを示したい。【長井智子】

新型コロナウイルスの影響を受け、休業に追い込まれた小東京の日本食店の店内

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