当たり前に感謝

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 在宅勤務をしながらアメリカの公共ラジオNPRを聞いていたら、スーパーの店員がインタビューでこう答えていた。「今までこんなに人に感謝されたことはない」と。食料品を運ぶトラックの運転手も普段はない敬意を受けて感慨深い様子だった。
 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、多くの人たちが亡くなっている。日本でも緊急事態宣言が出され、社会活動が制限されている。リーマンショック級の経済危機ともいわれ、失業者たちが増え、社会不安から人種差別やフェイクニュースがまん延し、アジア系住民に対する誹謗(ひぼう)中傷が相次いでいる。世界各地で人々はパニックに陥っているように見える。
 よくコロナウイルスとの戦いは戦争に例えられるが、戦時下を経験していない私にとっては前代未聞のことが目の前で起きている。とはいえ、朝から晩までニュースを追いかけつつも、どこか離れたところからこの現象を見ている自分がいる。こんな時でもネガティブな面だけでなく、ポジティブな面もあると思っている。
 なかなか進まなかったテレワークが一気に進んで、多様な働き方ができるようになった。マスクが買えなくて困っていたら、同僚が手作りの布マスクをプレゼントしてくれた。持病を抱えないよう日々の生活や健康に心掛けたいと思った。家では仕事はできないと思っていたが新たな自分を発見した。医療に携わる人、食料品を運ぶ人、スーパーで働く人への感謝の気持ちをより感じるようになった。
 そして何よりも、行きたいところに行って、したいことをするというそんな日常がいかに恵まれていたかと思うようになった。当たり前のことの大切さ、ありがたみ、色んな人たちに支えられて普段の生活が成り立っていることを改めて認識するようになった。
 台風や地震、津波もしかり。こういう大きな災難は、現代社会や現代人に何らかのメッセージを伝えるために、大切なことを思い出させるために、定期的に起こるものなのかもしれない。人間は過去から学んでいるようですぐに忘れてしまう生き物。忘れては起き、忘れては起きる。【中西奈緒】

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