識者を迎えウェビナー:感染拡大の危険に警鐘鳴らす

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100人ほどのメディア関係者がオンライン会議システムを使ったウエビナーに参加した

 アジア系を含む民族系住民特有の課題に取りくむエスニックメディア社は、医師をはじめ第一線の識者を講師に迎えたウェビナー(ウェブセミナー)を開催し、エスニックコミュニティーにおける新型コロナウイルス感染拡大の危険を論じ、警鐘を鳴らした。


◎自宅待機で安全を確保

 3月31日午前11時時点で、世界の感染者75万4948人、死者3万6571人(WHO)と猛威を奮う新型コロナウイルス。カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部教授でアジア系米国人リサーチセンターのディレクターを務めるタン・ニュエン医師は、話の切り出しに重症感染者を治療する医療現場の現況を知らせた。
 「死ぬか生きるかの瀬戸際にいる患者を前に、医師たちはどの患者が集中治療用のICUベッドを使うかを決めなければならない状態。他の病気やけがの患者がいるところにCOVID―19の患者が運び込まれ、通常の治療ができなくなってきている」
 ニュエン医師は「最高の医療システムといえどもこの抑制の効かない感染拡大に対応するすべがない。予防がいかに大事かということをぜひ分かってもらいたい。感染と拡大防止には、外出しないこと。これしかない」と続けた。ウイルスは空中で3時間、段ボール類で24時間、プラスチックなどの表面では72時間まで留まる場合があるので、物を触る時に特に注意すること。ドアノブやハンドル、携帯電話などの表面は頻繁に除菌することを心掛けるようにと話した。また、「買い占めは有害な行為。必要以上に物を買い占めることが、例えばマスクなどを必要とする人にそれが届かないという事態を起こしている」と注意した。
 多くの人が無症状のまま感染している。だが、テスト数が限られている現在、テストは絶対に必要な人々に回すべきである。また、現時点では治療法も無い。つまり無症状、あるいは心配というだけで病院に来て医療従事者の時間と資源を消費するべきではない。
 しかし、もしも症状があったら? 症状があっても軽ければ、市販薬のアセトミノフィンを飲み、水分を十分に摂取して、自主隔離する。1週間様子を見ても改善しなければ、口頭による医師の指示を仰ぐ。いきなり医師に会いに行かず、自主隔離を続けたまま、まず電話などで指示を仰ぐことが重要だ。もしも症状が重く、吐き気や息苦しさを感じたら速やかに医師に連絡するべきである。
 また、「一軒家に子供からお高齢者までが暮らしているような場合は、屋内に菌を持ち込まないように『除染室』を作るとよい」とアドバイスした。玄関やガレージ、バスルームなどに場所を決め、外で着ていた服を脱いだり、手を洗ったり、症状がある場合はマスクを取り替える場所として利用することで、家庭内での菌の拡散の抑える効果が期待できる。
◎皆の世話をする

診療室から白衣を着たまま参加したダニエル・ターナーロベラス医師

 サウスベイの「Harbor-UCLA/David Geffen School of Medicine」准教授のダニエル・ターナーロベラス医師は、医療用ガウンを身につけ、新型ウイルスとの戦いの前線で働く格好そのままで診療室からカメラに向かった。「急患の声が掛かったら話は中断させていただく」と前置きした医師は、「人工呼吸器の不足の問題はどう思うか」という質問者に答えて、「カリフォルニアとニューヨークはそれでも数週間は準備をする期間があったので、感染者の大群が押し寄せてくる前にある程度の準備をすることができたほうだ」と話した。
 ワッツ地区やスキッドロウ地区での医療提供を通じて低所得層や不法移民層の実情をよく知る同医師は、不法移民や難民を置き去りにするべきではないとし、この世界的流行(パンデミック)の期間は移民関税執行局(ICE)は不法移民の摘発を一時停止しトランプ政権による難民申請者のメキシコ側待機の政策も一時停止するべきだと主張する。「金がない、医療保険がない、摘発への恐れ、将来のグリーンカード取得への悪影響の心配。これらの理由で治療が必要なのに出てこれない人々が、伝染の先駆となってしまう」という。
 足並みが揃わなければ感染拡大の鎮静も遅れるし、何より、手遅れになる前に誰もが安心して治療を受けられることは大切であろう。
 また、一般市民には外出制限という考えよりも一歩進んで、政府や公衆衛生局が定める「自宅避難ガイドライン」に沿う考えを持つことを提唱する。これは、非常事態が終息するまでは自宅に避難するという心構えである。
◎色付きコミュニティーが持つリスク
 「Health Begins」の創設者で社長のリシ・マンチャンダ医師は、黒人、ラテン、アメリカ先住民らの人々、いわゆる色付きのコミュニティー(Community Of Color)は新型コロナウイルス肺炎に対して一般よりもリスクが高いと分析する。
 健康保険の保有率と経済面の弱さで、経済危機や公衆衛生危機に持ちこたえる力がない。「ということは、感染の危険も高い。なぜなら、働かねば暮らしていけない。時給の低い、保険も提供されない仕事に就き、病気であっても仕事に行きたい。今は誰もが家に閉じこもらねばならない時期だが、彼らにとってそれは死活問題だ」
 マンチャンダ医師は、また、「サービス業、ヘルスケア、キャッシャーや日用スーパーの店員などの仕事に就いていることが多いので、危険でも仕事に行くべきか、家で安全に過ごすべきかの選択を迫られるが、働かないわけには行かないことが多い」と話した。
 「このコミュニティーの人々は糖尿病や心臓病などの生活習慣病を持つ人が多く、喫煙者も多い。感染すると重症化するリスクがより高いが、テストキットが不足している現状もあり、困難が多い」と心配する。
◎精神衛生は重要
 トランプ政権の「Center for Mental health Services Advisory Council」の一員で精神衛生に詳しいサンパット・シバンジ医師は、外出禁止のため人々が社会から孤立することが原因で起こり得る悪影響について話した。
 「隔離(Quarantine)は、好きな人と近づけず、自由を奪われ、不確かで退屈で、不愉快な経験だ。それが引き金でアルコールや麻薬に助けを求めることが起こる可能性が出てくる」と同医師。
 「社会とのつながりを絶たれると、心臓病の発症率が高まるほか、社会的孤独や寂しさは、身体面、精神面、肥満予防のすべての側面で2倍有害だ」と話す。孤独は自殺や早死にを誘発しやすいと警鐘を鳴らした。
 ロサンゼルス郡公衆衛生局
www.publichealth.lacounty.gov/media/Coronavirus/
 疾病予防管理センター(CDC)
 www.cdc.gov/coronavirus/novel-coronavirus-2019.html
 WHO(世界保健機構)
www.who.int/health-topics/coronavirus
 エスニック・メディア・サービスのウェブサイト―
 ethnicmediaservices.org

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