コロナの日々

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 コロナウイルス感染もようやくコントロール下に入り、ロックダウンを段階的に解除する動きが出始めた。レムデシビルというエボラ熱の治療薬がコロナにも効果があると発表された。治療薬が一つでも確認されたことは喜ばしい。しかし、ワクチンが開発されるまでは、根本的な解決にはならず、ソーシャルディスタンスを守り、予防に務めねばならない。気の緩みは禁物だ。我々はまさに、激動の歴史の真っただ中にいる。
 外出禁止は発令から6週間にもなると耐え難い。こういう時は友人、知人から、不自由な日々をより快適に過ごすため、さまざまな気晴らしウェブサイトが送られてきて、ありがたい。発信者はきっとたくさんの時間を費やしているはずだ。受け取る側は、誰かが気に掛け、励ましてくれていると感じる。仲間の思いやりは、不安で鬱になりがちな今の特異な状況下では、心強い。
 送られてきたものに、ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場が特別に配信しているオペラ鑑賞サイトがあった。世界一流のオペラスターが出演する人気オペラを自宅で、見れる。オペラはフルオーケストラ、声楽家たちの渾身(こんしん)の歌唱、演技、コーラス、豪華絢爛(けんらん)たる衣装、舞台装置などが結集した総合芸術だ。3、4時間もかかる公演をじっくり鑑賞すると、アートに懸けた人たちの才能と情熱に感激する。すべてが手作りで手抜きのない本物。何というぜいたくな芸術だろう。
 オペラファンならずとも、一度は聞いたことのある演目が目白押し。アイーダ、ロメオとジュリエット、ルサルカ、マダム・バタフライ、トスカ、ラ・トラビアータなど。何週間も、毎日違うオペラを鑑賞すれば、質、量ともに大学の教養過程レベルの講義を受けたに等しい。名曲は、時代は変われど、人間の核である変わらぬ情念に触れるものが根底にあり、時と場所を超えて我々の胸を打つ。
 細菌感染パンデミックという前代未聞の悲劇に耐える中で、人間の創作力が結集した格調高いオペラを楽しめた。人間は細菌よりも賢いはずだ。人間の叡智(えいち)が細菌に打ち勝つ日を辛抱強く待つ。【萩野千鶴子】

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