介護者フォーラムに60人参加:情報やリソースを提供

0

Keiro

オンライン会議のZOOMを使って約60人がセミナーに聞き入り、高齢期の介護について学んだ

 Keiroが20日、バーチャル介護者フォーラムを実施した。前回5月に200人を集めたバーチャル介護者カンファレンスに続き、今回は介護の情報やリソースを得られるバーチャルセミナーをオレンジ郡日系協会(OCJAA)と共催した。およそ60人が自宅からオンライン会議システムを通じて参加、中には真夜中の日本からの参加者もいた。

押し寄せるシルバー津波にのみ込まれず、大切な人との介護の時間を充実させることが大切だ

 「シルバー津波」という言葉を聞いたことがあるだろうか。高齢化社会をたとえる言葉だが、では老年期とは何歳からなのだろう? 実は答えはさまざまだ。米国では50歳になると「AARP(American Association of Retired Persons)」から「会員の資格ができた」と勧誘が舞い込む。個人退職年金を自由に引き出せるようになるのは59歳6カ月を過ぎてから。シニアハウジングの入居資格は、オレンジ郡のリージャー・ワールドでは55歳以上だが、ロサンゼルスの小東京タワーズは62歳以上だ。老人医療のメディケアは65歳からで、国連が「シニア」と規定する年齢と合致しているが、定年制のない米国では70代後半でも元気に会社勤めをしている人がいる。定年があるはずの日本でも「70歳就業法」ができて、来年からは様子が変わる。
 老年期がいつからとはっきり定義できないように、介護も「いつから」の定義はできない。実際には、「気がついたらだんだん介護が必要になっていた」という人が多いのである。
 高齢期の介護に焦点を当て、「受け取る側と提供する側の、今から知っておくと便利な基礎知識」と題して、カリフォルニア州公認臨床 ソーシャルワーカーのレイン志織さんが講演した。レインさんは、「ワンサイズですべてに対応」というわけにいかない介護の難しさや、介護の種類、「心・気持ちの問題」が及ぼす影響を、介護を受け取る側・提供する側の両方の目線から話し、すぐ実践できる日常生活での工夫点や解決策と共に紹介した。
 ▽老年期の健康問題では、精神と脳の健康は避けて通れない。
・精神の健康には「うつ病」「不安障害」「グリーフ(死別・健康)」「依存(薬物・アルコール)」の4分類があり、それぞれに精神的症状と身体的症状がある。例えば、うつ病(デプレッション)の症状には、今まで好きでやってきた趣味に興味が持てなくなったり、出無精になったりといった症状がある。不安症の人は不安が押し寄せてきたとき呼吸がうまくできなくなることがあるが、そんな時には4秒吸って4秒止めて、6秒で吐き出す「4・4・6」の呼吸法を2分続けるともとの自然な呼吸を取り戻すことができるという。
・脳の健康問題である認知症。大きな「認知症」の傘の下に「アルツハイマー型」「血管性型」「レビー小体型」「前頭側頭型」「アルコール・薬物依存」「不治の精神障害」の分類があると考えると分かりやすい。周辺症状の「不眠、過食、徘徊(はいかい)、興奮、攻撃、イライラ、不安、焦燥、無関心」から、中核症状の「記憶障害、見当識障害、遂行機能障害、失語・失行・失認」に移行するが、病気の型によって進行速度は異なる。アルツハイマー型は進行がゆっくりである。

加齢と認知症による物忘れは、自覚や日常生活での支障、判断力低下などの有無で違いがある

 物忘れをしても、「物忘れの自覚があり、思い出せないのは体験したことの一部で、ヒントをもらえば『ああ、そうそう!』と思い出す」のであれば、「加齢による物忘れ」。一方、「物忘れの自覚がなく、判断力が低下し、日常生活に支障がある」のは「認知症による物忘れ」の特徴だ。自分の記憶障害に「不安や焦燥感を覚えることがない」のが認知症の症状だという。
 精神疾患も認知症も、高齢期に当たり前におこる病気ではないと理解しよう。診療やアセスメントを受ける目安は、身体的症状が2週間続いたら。認知症は早い明確な診断により、膨大な医療費の節約ができると言われている。
 ▽介護とは(定義、統計、種類)
・米国では4400万人が無償のケアギバーとして高齢者、障害者の介護をしている。80%のケアは自宅で行われ、27%のケアギバーは「老人」と「子ども」の両方をみる「サンドイッチ世代」。娘だから、息子だから、と親を手伝っているうちに介護担当になってしまい、4人に1人のケアギバーが介護の責任から家族の関係性に問題が生じているという。
・介護ニーズは、手段的な動作の手助け(服薬管理、家事、洗濯、買い物、食事の準備、移動の形式、金銭管理、電話)と、基礎的な日常生活の手助け(食事、着替え、入浴、トイレの使用、歩行や移動)に大きく分かれる。
・介護の内容で一番多く約8割を占めるのは、「食品や日用品の買い物」「通院の付き添い」「金銭管理」「外出の移動手段の提供」。次に多いのが、「通信役」で、約7割の人がほかの家族、親類や友人に被介護者の様子を知らせている。
レインさんは、介護におけるケアギバーの負担として以下を挙げた。
・身体的な負担(要介護者の体を1日に何回も支えたり持ち上げたりするための首、肩、腕、腰、膝などへの負担、同居でない場合の行き来の負担、自分の生活や健康を二の次にする負担)
・経済的な負担(介護離職や出勤時間を減らすための収入源、介護用品や介護食品の自己負担、派遣業者を通じでケアギバーを雇い、その相場は1時間25ドル)
・精神的な負担(要介護者・他の家族・友人らとの関係、医療関係者との関係、介護サービスへの不満、一人で抱え込む、罪悪感、自分の時間がない)
被介護者にも各項目にそれなりの負担がある。
 ▽介護を改善する日常生活での工夫(生活・金銭管理・会話)
・日常生活を行う上で、危険なものを除き、便利なものを足す。
・あえて寝室を別にし、緊急ボタンやモニターを付け、介護者の休養に配慮する。
・第三者と相談しながら在宅介護を見直す。二人だけの世界にはいらない。
・英語が通じない場合は保険会社の日本語通訳を利用する。
・早い時期に、銀行口座や口座を共同にしたり、権限承諾を得ておくこと。公共料金の自動引き落としを利用すること。老人詐欺や経済虐待を監視できる。
・笑いを取り入れ、現状を受け入れて、会話のしやすい温かく安心できる環境をつくる。
・目の前から話しかけ、相手の意識を引き、話を聞こえやすくする。
・シンプルな会話、簡単な選択肢で問いかける。
 ▽介護ストレス(兆候と対処法)
 うつ、不安、情緒不安定、絶望感。孤独感、食欲異常や睡眠不足、お酒や薬物の使用・増加、ネット・ショッピングで必要のないものを買う…、こんな症状はストレスのサイン。介護者も医師に相談したり、カウンセリングを受けたり、サポートグループに参加してストレスを管理するテクニックを学ぶとよい。自分の仕事を代わってもらうレスピトを一時的に雇うこともいい方法だ。
 介護にストレスを感じたとき、レインさんのような高い専門知識のある臨床ソーシャルワーカーに会う利点は、心理社会的アセスメントと心理教育(精神疾患の診断の説明や医療ドキュメントの説明)の両面で頼りにできる点だ。
 ソーシャルワーカーは主治医から紹介してもらうこともできる。心理アセスメントについてはサイコロジストやマリッジ&ファミリーセラピストに相談するのもよいという。高齢期の病気について、医療の選択肢などについてより深く討議したい場合は、老年医学専門のジェリアトリシャン(Geriatrician)に会うことも一つの方法だ。
 参加者の中で、介護をするためにもうすぐ日本に行く予定という女性は、日本と米国の状況について質問した。レインさんは、「日本には国が提供する無料のリソースが多い。日本の臨床心理士に会うには、市町村が運営する『地域包括支援センター(包括)』にまず連絡するとよい」と助言した。
 日本語によるサポートグループとしては「OC介護の会」やLTSC。また、Keiroも個人単位の無料カウンセリングプログラムの「癒やしケア」を実施している。
 Keiroの代表兼CEOのジーン・カナモリ氏は5月の介護者カンファレンスで「この数カ月間は誰にとっても新しい日常に慣れる、適応する時期だったが、そのような中で家族を介護したり、サポートするのは簡単なことではない」と述べた。
 どのような時でも介護の手を止めることのできない介護者。パンデミックの医療従事者と同じ、家庭におけるヒーローだと言えるだろう。だが、おそらく当事者である介護者の多くはヒーローになることよりも、「大切な人と介護の道中を悔いなく進められるよう、介護問題を一緒に考えよう」というKeiroの言葉が胸に響くに違いない。【長井智子】

日米の違いを理解し高い専門性を発揮する
老年医学専門臨床ソーシャルワーカー
レイン志織さん

カリフォルニア州公認臨床ソーシャルワーカーのレイン志織さん

 佐賀県出身のレインさんはアリゾナ大で家族学と人間発達学の学士号取得、加州立大学ロングビーチ校にて社会福祉事業学の修士号を取得。現在はシールビーチの医療センターで老年医学専門臨床ソーシャルワーカーとして勤務する。
 緩和ケア、メンタルヘルス心理カウンセリング、急性期病院での治療を終えたのちに自宅に戻った患者への持続的治療などの臨床ケースに医療従事者として携わる傍ら、心理教育セミナーやサポートグループを提供。2018年には個人事業のオフィスをロングビーチに開業し、心理カウンセリングとジェリアトリックコンサルテーションを提供している。専門は高齢者、家族、介護、認知症、メンタルヘルス、グリーフケア、マインドフルネス。
 これまでも郡の高齢者協議会やサウスベイの公共保健機関で高齢者のケアマネジャー、さまざまな心理社会福祉学に関するサポートグループやワークショップを開催、ソーシャルワークを専攻する大学生・大学院生のインターンシップ・スーパバイザーとして学生育成にも取り組むなど幅広い経験と実績を積んできた。完全な日米バイリンガルで、日米のさまざまな違いを理解しつつ高い専門性を発揮する貴重な存在だ。

認知症は周辺症状から中核症状に移行するが、高齢者に当たり前に起こる病気ではない

Share.

Leave A Reply