パンデミック俳句

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 新型コロナウイルス感染の広がり続けるアメリカで俳句が人と人とのつながりを強めている。「Pandemic Haiku」(パンデミック俳句)だ。オンラインを通じて全米で広がりを見せ、ついに俳句集が出版にこぎつけた。集めた俳句は130点。34枚の絵や写真が添えてある。小学生から高齢者までまさに老若男女100人を超える人たちが詠んでいる。編集責任者は女性の精神科医、ロビン・シャンナウさん。地下の仕事部屋でこの孤独さを俳句に載せて皆に聞いてもらったらどうだろうとふと思い立った。
 パンデミック俳句を一つ二つ紹介する。
 Started to sew masks. Crafting used to be so fun. Now it’s life or death.(マスクを縫い始めた。前から楽しかったクラフト。今それは生死を決める)
 What if mother earth Developed antibody to fight off virus? (母なる大地がウイルスを撲滅してくれる抗体を開発してくれたらどうなるだろう)
 伝統的な俳句のルールの季語や切字はもとより余韻などは一切無視。無季俳句や自由律俳句といったところだ。パンデミック社会で三密を守り、家にじっと閉じこもっている米市民が思ったこと、感じたことを五七五のシラブルで表現する。虚脱感や絶望感を俳句に託して見知らぬ人たちに投げかける。それを見知らぬ人は受け止め、共感し、自分の想いを俳句で投げ返す。
 悲しみやつらさを分かち合い、励まし合う。そこに俳句を通してコミュニティーができ、つながりが広がっている。かつて俳句研究家の第一人者、尾形仂さんはこう述べている。「俳聖・松尾芭蕉にとって、俳諧における営みの意義は、創作を通じて個を主張するのではなく、それを介して他とのつながりを作ることにあったと思う」
 だとすれば、無手勝流の「パンデミック俳句」は芭蕉が目指した俳句そのものを体現しているのかもしれない。アメリカに俳句が入ってきたのは60年代、ビートニックの影響とされている。俳句は見る見るうちに米本土を席巻し、今では中学校や高校でも教えている。感じたことをストレートにぶちまけて世界をあぜんとさせている某国の大統領。俳句方式でツィートすれば、少しは理路整然としたメッセージになるかも。【高濱 賛】

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