母とコロナと新聞と

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 アメリカに戻る前に再度福岡の実家に帰省すると、黄金色となった田んぼを紅い彼岸花が色どる景色がそこここに広がる秋となっていた。ここ数日、この秋色の中を走るバスに乗って、私は母のもとに新聞を届けている。
 もうすぐ98歳になる母は、椅子から立ち上がろうとして転んで動けなくなり、救急車で病院に搬送された。診断は大腿骨下での骨折で、手術が必要という。
 長生きし過ぎたと言いながらも、これまで新聞とテレビで毎日を楽しんで過ごしていた母だ。とりわけ新聞への思い入れは強い。娘の頃は父親のしつけが厳しく、家事が全て終わらなければ新聞を手にすることは許されなかったとか。ところが結婚してからは、朝食後すぐに新聞を読んでも夫から何も言われず、幸せを感じたそうだ。新聞を広げる時の顔は、いつもうれしそう。
 義母の時もそうだったが、このコロナ禍に入院すると、病院では家族でさえ面会が禁止されている。面会がダメならせめて大好きな新聞でもと届けるのだが、痛みも少しは和らいで読めているだろうか。
 今日届けた新聞には、トランプ大統領の新型コロナ感染が報じられていた。「暖かくなれば奇跡のように新型コロナウイルスは消えていく」と断言したことや、「マスクを着けるのは弱虫のすること」と言い放ったことを思い出さずにはいられない。
 これらを始めとする一連の言動は日本でも多くの人に疑問に感じられているようで、「アメリカ人はなぜトランプさんを大統領に選んだのですか」と何度も尋ねられた。が、私には、「さあ、本当に不思議です」としか答えようがない。来月、アメリカの再度の判断を待つのみだ。
 10月といえば、日本では毎年10月15日から21日までが新聞週間とされ、例年この期間中に新聞大会が催されてきた。今年の大会は東京五輪・パラリンピック開催の関係で11月に予定されていたが、これもまたコロナにいろいろと影響されることだろう。
 ところで今回、今年で73回を数える新聞週間は戦後、アメリカに倣って始まったのだと知った。そして本家アメリカの新聞週間といえば、今週、10月4日から10日までだそうだ。【楠瀬明子】

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