一笑一若

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 かつて伊勢湾台風が明治以降で最大の被害をもたらした後、庄内川と新川に挟まれた輪中地区に建てられたのが、私が生まれ育った公営の復興住宅でした。ここに住む多くの人が家や財産を失った人たちでした。母はそんな人たちを相手に集合ストアーの中の小さな店を借りて、菓子屋とパン屋をはじめました。その傍らでクリーニング店まではじめたので、雇い人もなしで一人でこれをこなす母は正に働きづめでした。朝は早くから仕入れに行き、夜は遅くまで帰宅しませんでした。
 そんな家庭でしたので、小さな頃から何かの悩みや相談などを親に話すような時間や心の余裕もなく、あらかたの事は自分なりに解決していたように思います。それでも、どうしても自分では解決ができないような問題が出た時に母に相談事をすると、そんな小さな事で悩んでいたのかと言うように品のない声で笑い、いとも簡単に解決の道をつないでくれました。今思えば、笑う事で不安を一掃し、笑う事で気持ちを明るい方向に転換させていってくれていたのかもしれません。
 「一笑一若」という言葉があります。人は笑う事で福をもたらし、笑う事で若返ります。古い昔から言われていた事ですが、医学的な根拠もあるようです。笑う事で脳が活性化され、ストレスの解消や運動した時と同じような効果を生みます。「笑う門には福来たる」のみではなく、「健康も来たる」のです。
 反対に、「一怒一老」という言葉もあります。一つ怒れば、一つ老いると言う格言です。怒ると、ノルアドレナリンという有毒のホルモンが分泌され、これが老化を早めるのだそうです。冷静さをなくして人の悪口しか思い浮かばなければ、寿命は短くなるようです。
 新しい年を迎え家族が健康である事に感謝し、笑い合いたいものです。信頼をした相手が喜ぶ顔を思い浮かべて過ごす事は、私たちが健全に生きていくために、食べる事と同じくらい必要なことなのかもしれません。笑いは百薬の長、笑顔こそ良薬です。笑う事で落ち込んでいた気持ちやストレスを解消し、寿命は伸びると信じて毎日を過ごしたいものです。【朝倉巨瑞】

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