多くのホームレスが生活するトリウミ・プラザ。住居提供命令の対象外となりホームレスは住み続けることになる(写真=マリオ・レイエス)
 3月に、小東京の路上で3人のホームレスが遺体で発見された。花も賛美歌もなく、ただ悲しみと無力感に押しつぶされそうだった。薬物の過剰摂取によって死亡した1人の男性は、1街のアイソ通り駐車場上のトリウミ・プラザにある25〜30のテントが張られた大規模なテント村で暮らしていたが、半年前まではこのようなテントはなかったという。1〜2月にかけてパンデミックのため自宅待機していた経営者やビジネスマンらは、小東京を救うことを使命としていたハワード・トリウミ牧師の名を冠したプラザがテントやシートで埋め尽くされているのを見てショックを受けた。駐車場のスタッフによると、ここに車を停める人は減っているそうだ。

3月にトリウミ・プラザでのホームレスが薬物の過剰摂取で死亡し、調べる消防隊員と警官
 3月に、デビッド・O・カーター連邦地裁判事は、ロサンゼルス市と郡に対し、10月中旬までにスキッドロウ地区でホームレスのような状態にある人々に「何らかのシェルターや住宅を提供する」よう命じた。独り身の女性や子ども、家族は特に優先される。同判事の命令は、2〜8街、スプリングからアラメダ通りまでのスキッドロウ地区に住むホームレスに適用され、小東京内では、ハシモト・プラザや2街とセントラル通り周辺にいるホームレスに住居が提供されることになる。しかし、トリウミ・プラザの大規模なテント村に住んでいるホームレスは対象外となっている。
 小東京防犯協会(LTPSA)とリトル東京ビジネスアソシエーション(LTBA)は、共同声明を出し、ホームレス問題への取り組みは歓迎すべきことであり、必要なことであると認めているものの、両団体は政府機関に対し、財政の説明責任と今後有意義な話し合いにおいて幅広いコミュニティーの代表者を参加させるよう求めた。
ホンダプラザ前にもホームレスが生活し、歩道を歩くことが困難になり商店主や住民を悩ませている
 ホームレスの存在は小東京の治安を悪化させ、客足が遠のく可能性があると話すのは、小東京防犯協会会長のブライアン・キトウさん。「提供された住宅に移るのを拒んだスキッドロウのホームレスは、小東京やアート・ディストリクトなどの近隣地域に移動してしまうのではないかという懸念が、経営者たちの不安を増幅させている」と話す。また、LTBA会長のエレン・エンドウさんも「判事の提案が2街沿いのホームレスに住宅やシェルターを提供するのはありがたいことだが、トリウミ・プラザを除外することは、事実上、われわれのコミュニティーを分断することになり、地域住民の声を無視していることになる」と指摘した。
 同判事の命令は、ガーセッティー市長がホームレス問題を改善するために緊急権限を行使しなかったことや、対策の透明性の欠如を暗に批判しているという。昨年の夏、ロサンゼルス・ホームレス・サービス・オーソリティー(LAHSA)は、「2020年グレーター・ロサンゼルス・ホームレス・カウント」を発表し、郡内のホームレスは6万6436人であることを明らかにした。また、21年2月、ロサンゼルス・ビジネス・カウンシル主催のサミットで、マイク・ボニン市議会議員は、「率直に言うと、ロサンゼルスの住居対策は失敗だ」と明言。同席したケビン・デ・リオン市議会議員も「客観的に見ても現状は機能しておらず、まとまりがない。システムは完全に軌道から外れている」と述べている。
 4月21日、ロサンゼルス郡は、判事の判決を不服とする通知を提出しており、命令の停止を求める予定。【訳=砂岡泉】


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