ゴー・フォー・ブローク記念切手の除幕式を行った(右から)USPSエグゼクティブ・プラント・マネージャーのダニエル・ヒライ氏、「Stamp Our Story」記念切手の発行に15年前から取り組んできたタカハシフサさんと、「Stamp Our Story」キャンペーンの共同委員長を務めるウエイン・オオサコさん
 第二次世界大戦の日系陸軍兵士の功績をたたえ発行された切手「Go For Broke」の記念式典が4日、発行第一号都市のロサンゼルスで開催された。式典は小東京の全米日系人博物館(JANM)のデモクラシーセンターで行われ、「Stamp Our Story」創設者や二世退役軍人らが参列した。また、他の都市でも同様の式典が行われた。

USPSのヒライ氏は二世兵士の犠牲に敬意を表した
 司会を務めたABC7ニュースキャスターのデビッド・オノさんは、「二世退役軍人の活躍は、第二次世界大戦における日系米国人の歴史を語る上で欠かせないもので、彼らは名誉や義務、忍耐といった日系米国人の価値観を、身をもって証明した」と説明。続いて「われわれが今日ここにいるのは、3人の女性の多大なる忍耐と献身のおかげだ」と「Stamp Our Story」の創設にかかわったタカハシフサさん(93歳、グラナイト・ベイ在住)、アイコ・O・キングさん(93歳、カマリロ在住)、オオヒラチズさん(故人)の「真のGo For Broke精神」を称賛した。
 式典には、Stamp Our Story キャンペーンの共同委員長を務めるウエイン・オオサコさんをはじめ、主賓として退役軍人のヨッシュ・ナカムラさん(96歳、第442連隊戦闘団)、ドン・ミヤダ氏(96歳、第100歩兵大隊)、トクジ・ヨシハシさん(98歳、第100歩兵大隊)、ラルフ・マツモトさん(100歳/陸軍情報部)が参列した。
 JANM館長兼CEOのアン・バロウズ氏は、参列した二世退役軍人に「あなた方がいなかったら、われわれはここに存在していないだろう」と語りかけ、また、記念切手を発行した米国郵政公社(USPS)に感謝の意を表した。また、「この切手の発行は、アメリカで反アジアの憎悪が高まっている中、これ以上ないほどタイムリーで有意義である」と述べた。
 USPSを代表して登壇したエグゼクティブ・プラントマネジャーのダニエル・ヒライ氏は、第二次世界大戦で戦った3万3千人以上の二世陸軍兵士の勇気と犠牲に敬意を表し、「ハワイで育った私は、二世陸軍兵士の活躍を聞きながら育った。彼らの信念は『Go For Broke』。全力で勝つために全てを賭けて努力するという意味のスラングだが、危険を冒して困難に立ち向かった彼らの姿は、私のキャリアにもインスピレーションを与えてくれた」と自身のエピソードを交えながら話した。
謝辞を述べる切手発行キャンペーンの共同委員長を務めるウエイン・オオサコさん
 ビデオで登場したハワイ「二世・ベテランズ・レガシー」のリン・ヘイラクジ会長は、アジア系米国人の兵士をモチーフにした米国郵便史上初の切手が発行されたことに大きな喜びを感じると述べ、記念切手に描かれているハワイ・ニノレ出身のシロク・「Whitey」・ヤマモト上等兵について語った。ヘイラクジ会長によると、1923年にハワイ島で生まれたヤマモト上等兵は、442部隊に志願入隊した後、イタリアやフランスで参戦。ハワイに戻ってからは、20年以上にわたりハワイ米軍博物館でボランティア活動に尽力し、2018年に95歳で逝去したという。また「第二次世界大戦では、日系米国人に対する偏見がまん延していたにもかかわらず、私の父を含む多くの男性が従軍した。彼らの物語を確実に伝えることは、私たちに課せられた使命だと思う。彼らが差別に立ち向かった結果、のちの世代に大きなチャンスをもたらした。この切手は、反アジア感情の高まりや国の分裂に直面している今、平等と正義を守ることの重要性を訴えている」と述べた。
 祖母のタカハシフサさんに代わって登壇したキミ・トンプソンさんは、記念切手発行を実現するために、フサさんが15年間にわたりどれだけ献身的に活動してきたかを語った。「チラシの手配りから始まり、何千人もの署名を集め、さらに活動を広めるためのハッシュタグを考えてほしいと私たち孫に頼んだこともあった」。キミさんによると、祖父のカズオさんは通訳や防諜(ぼうちょう)活動を行うMISの一員だったという。「祖父は、トパーズ収容所に収容されている間にアメリカ陸軍に徴兵された。祖母は14歳のときに両親と兄弟と一緒にコロラド州の収容所に送られ、飼い犬を含めて全てを捨てなければならなかった。これは学校では習わなかった歴史の一部だが、祖母の話と『Stamp Our Story』の活動を通して学ぶことができ、とても感謝している」と締めくくった。
記念切手は式典開催に合わせ全米でLAが最初に販売した
 会場となったデモクラシーセンターは、アナハイムの学校区の小学生による色とりどりの折り鶴で飾られていたが、これは共同委員長を務めるウエイン・オオサコさんによるアイデアで、オオサコさんの娘が通う小学校の担任に「Stamp Our Story」や日本の伝統的な千羽鶴の話をしたところ、折り鶴作成が決定したという。「兵士たちを奮い立たせる『Go For Broke 』の精神は、この鶴の力強さや永遠性に具象化されていると思う」と話すオオサコさんは、今後も記念切手発行を実現する活動を続けたいと述べており、米国先住民のナバホ族の名を挙げている。
 「彼らの歴史には記念切手の価値がある。世の中にはたくさんの『ストーリー』がある。お互いの違いを認め合い、人間として団結し歴史の遺産をたたえよう」と結んだ。
 当日は、マーク・タカノ下院議員(リバーサイド地区選出)、ユタ州のジャニ・イワモト上院議員らも参列し、また、エリック・ガーセッティーLА市長からビデオメッセージが寄せられたほか、著名なアニメーターのウィリー・イトウ氏が式典のために描き下ろしたイラストも披露された。さらに、日系米国人バンド「ヒロシマ」でキーボード奏者として活躍するキモ・コーンウェルによる「星条旗」演奏をはじめ、さまざまなアーティストやミュージシャンが参加。また、ジェイク・シマブクロ、ミニドカ・スウィング・バンド、サクラメント太鼓団のパフォーマンスもビデオで上映された。
 記念切手は、全米の郵便局で販売されているほか、usps.comでも購入可能。
【JKヤマモト、訳=砂岡泉、写真=マリオ・レイエス】
記念切手発行を喜ぶ二世退役軍人と切手発行で尽力したメンバーら

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *