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音楽の散歩道
自分の声はどんな声?
2008年3月28日

おがわ・ひろこ

小川弘子

神戸大学教育学部音楽科卒。同
大学院修士課程修了。専門はピ
アノ。歌曲、オペラアリアなど
声楽の伴奏を得意とする。97年
に渡米し教会、コミュニティー
団体などで伴奏している。

 ご自分の声を録音して聞いたことはあります
か? やってみたことのある方ならだれでも、
「私はこんな声じゃないのに」と驚き、中にはが
っかりした方もあると思います。でも、周りの人
に聞いてみると、「あなたの声は、いつもこの声
ですよ」と言われて、2度びっくり。いつも自分
が聞いている自分の声は、本当の自分の声ではな
いのか? 自分が聞いている自分の声と、他人が
聞いている自分の声が違うのは、なぜなのか? 
自分が聞いている自分の声と、録音したときの自
分の声は、一体どちらが本当の自分の声なのか?

 もちろん、自分が聞いている自分の声も、他人
が聞いている自分の声も、録音したときの自分の
声も、いずれも本当の自分の声です。このうち、
他人が聞いている自分の声と、録音したときの自
分の声というのは同じもので、つまり自分の声を
自分だけが違うように聞いているのです。なぜな
のでしょうか?

 

 声や音を聞くのは、耳を通してのみであると考えるのが普通ですが、実
はそれだけではないのです。自分の発した声という空気の振動が耳の穴か
ら外耳を通って鼓膜に至り、鼓膜の振動がその奥の耳小骨という3つの小
さな骨のある中耳を経て脳へと伝わる、というのが耳から聞く仕組みで
す。このようにして聞く、聞こえる音を気導音といいます。これに対し
て、頭蓋骨に伝わる声帯の振動が、外耳や鼓膜などを通過せずに直接内耳
に達して脳に伝わった結果聞こえてくるのを、骨導音といいます。両耳を
手か指でふさいで何か話してみましょう。外からの音は聞こえないはずな
のに、自分の声は聞こえますね。これが骨導音なのです。ただし、この場
合に聞こえる声は、ふだん自分が聞いている自分の声とは違います。

 いつも自分が聞いている自分の声というのは、気導音と骨導音が混ざっ
たものです。つまり、自分では、耳から鼓膜を通して聞く声と、鼓膜をま
ったく通さず声帯から骨に直接伝わる振動として聞く声のミックスしたも
のを、自分の声として聞いているのです。これに対して他人は、耳を通し
てしか聞きませんので、気導音のみを聞いています。録音も同様、空気を
通じての振動のみをとらえるので、気導音だけがキャッチされるのです。
こうして、他人が聞いているのと録音再生された声とは、気導音のみどう
しで同じものとなり。それに骨導音が加わったものを聞いている自分だけ
が、違った声に聞こえているのです。

 くじらは、水圧で押しつぶされないように耳は体内にあり、外からの音
を直接聞くことはできません。その代わりに、下顎の骨がわずかな水の振
動もとらえ、それらを耳骨に伝えることで外部の音を聞いています。つま
り、骨導音のみを聞いているのですね。一説によると500キロメートル
先の音も聞き分けるとか。ちゃんと機能していても、隣で話している人の
大切な用件を聞き漏らす人間の耳って、一体どうなっちゃっているのでし
ょうか?

 

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