神事は神官と阿曽女(あぞめ)と呼ばれる年配の女性によって執り行わ
れます。代々この阿曽女というのは、阿曽の郷という神社近くの集落出身
の女性がご奉仕として務めてきました。さていよいよ、鳴釜の神事の始ま
りです。長年の煤によって黒光りしたお釜殿の内部は、薪からの煙と水を
はってセイロをのせた釜からの湯気で白く煙っていました。神官が拍手を
打ち祝詞を読み上げると、阿曽女がセイロの蓋を取り除き玄米を入れたザ
ルをセイロの中で振り回し始めます。一心にザルを振る阿曽女の姿を見て
いるとその時、「ぼぉ〜〜」というか「ごぉ〜〜」というか、地の底から
のうなりのような音が聞こえてきました。そうです、めでたく釜が鳴った
のです。鳴るというよりお釜殿全体がうなっているという感じでしょう
か。かなり長い間鳴り続けていたように思います。神官の拍手を合図に阿
曽女はセイロに蓋を戻し、神事は終了です。
なぜ、釜が鳴るのか? なぜ、鳴るときと鳴らないときがあるのか?
どうしたら大きな音が鳴るのか? 音が長く続くのか? くべる薪の数や
気温、湿度とどのように関係があるのか? 薪の種類を変えたら、違うタ
イプの音が鳴るのか? 科学的に実験をすると、確かな答えが出るのかも
しれません。しかし、室町後期にはすでに京の都にまで知られていたとい
うくらい長い歴史のあるこの神事に、そのような科学的な証明や数字など
はいかにも不似合いであると思われました。
上田秋成の「雨月物語」にも登場するこの鳴釜の神事は、最近ではテレ
ビや雑誌などで取り上げられることも増え、サスペンスドラマの舞台にな
ることもあるそうです。そんな直後はバスを連ねての観光客が殺到すると
か。うーん、それってちょっと違うと思うんだけど……なんてつぶやきな
がらも、お釜がしっかりと鳴って占いの結果が「吉」と出たことにホッと
安心し、心静かに帰途についたのでした。
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