世界に広がる日本庭園:
鈴木、中根両氏が歴史や特徴を紹介
2009年4月12日
国際交流基金ロサンゼルス日本文化センターは3月26日、日本から日
本庭園の専門家2人を招き、北米をはじめ世界各地に広がる日本庭園の歴
史やその特徴をテーマとした講演会「On the Veranda」を日米文化会館で
催した。平日午後の開催にもかかわらず、同会館地下「清流苑」前の会場
は多人種の参加者で満席となり、南加での日本庭園の人気の高さを物語っ
た。
講師は、東京農業大学造園科学科の鈴木誠教授と、(株)中根庭園研究
所の中根史郎代表取締役の2氏。
鈴木氏は、海外における日本庭園の歴史を紹介。海外に初めて造られた
日本人庭師による日本庭園は、1873年の「ウィーン万国博覧会」で津
田仙氏が設計した神苑風日本庭園で、開園以来欧米の市民から皇帝にいた
るまで幅広い人々に親しまれたという。その6年前に開催された「パリ万
国博覧会」では、徳川幕府が「庭園」を出展したが、小さな池と橋がある
程度で日本庭園を意識したものではなかったことも紹介。以来、日本庭園
は世界各国に造園され、現在分かっているだけで計432が世界に存在。
日本との友好関係を目的に造られた庭園は150カ所にも及ぶという。
鈴木氏は、世界で日本庭園が造られるのは、「商業的」「政治的」「文
化的」「娯楽的」「友好的」の5つの理由からだと分析。また、2001
年9月11日に発生した同時テロ後、ニューヨーク消防学校の敷地に枯山
水が造られたことなどに触れ、近年はこの5つの理由に「癒し的目的」も
加わるようになったと説明。権力者のみが手にできた日本庭園は、誰もが
共有できるものに変化していったと解説した。
一方、造園部門の建設コンサルタントとして日本のみならず、世界で活
躍する中根氏は、日本庭園のデザインや設計技術、自然界における樹木の
変化などについて、写真を使い分かりやすく説明した。
中でも、日本庭園を美しく保つためにもっとも重要なこととして、「管
理」を挙げ、「適切な管理を施さない日本庭園は、いとも簡単に崩れてし
まう」と強調。米国内の日本庭園を訪れた際、松の木の管理が行き届いて
いない庭園もあり、「松の木は強い植物だが、とてもデリケートでもあ
る」として、適切な管理とケアが必要だとした。
また、世界中に広まる日本庭園について、「いい日本庭園とは、美しい
自然を見ているのと同じ。よって、その土地の自然の法則に沿った庭を設
計することが大切」と述べ、すべてを日本から輸入し、日本をまねた庭園
が必ずしも美しい庭園とは限らないと強調。その土地の植物を使い、日本
庭園の要素をうまく取り入れデザインするのが重要だとまとめた。
加州立ポリテクニック大 上杉名誉教授:
後継者育成学校の設立を
日本庭園技術者不足問題で
在ロサンゼルス日本国総領事館と南加庭園業連盟は3月25日、加州立
ポリテクニック大名誉教授、上杉武夫氏を招き、「今なぜ、庭園業なの
か—あらたなランドスケープビジョンのために」と題する講演会を催した。
上杉氏は、一時は8000人にまでに成長した南加日系庭園業者の歴史
を振り返るとともに、最近では後継者不足が顕著となり、米国内にある2
50以上もの日本庭園の管理・維持が難しくなっていると訴えた。
同氏は、会場に集まった造園を学ぶ学生や日系庭園業者ら約70人を前
に、(1)日米の庭園業界が協力し、低費用の日本庭園づくりと手入れを
目指す(2)日本庭園教育のための専門学校やオンラインコースの開設
(3)ワークショップなどの開催で伝統的な日本庭園の技術を提供し、温
暖化やグリーン産業の一助となるよう努力—の3点を提案した。
講演後は、東京農業大学造園科学科の鈴木誠教授と、(株)中根庭園研
究所の中根史郎代表取締役を交え、参加者らと活発に意見交換。参加した
庭園業者らからは、「専門家と庭園業者が『日本庭園維持』とのテーマを
通じ、一つになれた。互いの専門性を生かし、協力し合いたい」と、意義
あるものだったとの声が多数聞かれた。
【中村良子】
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