今なぜ、庭園業なのか③
加州立ポリテクニック大 上杉武夫名誉教授
技術者不足解消に向けて
2009年5月3日
経済の低迷が続くこんな世の中だけに、日本庭園を大切にしたいと存じ
ます。日本庭園あるいは日本式庭園を持った方がほとんど間違いなく、庭
を見て気持ちがなごむ、と言われる。また、滝の音、季節感、静けさ、な
ど自然を取り込んだ庭のたたずまいを、何年も飽きずに楽しんでいる彼等
の姿を見るたびに、日本庭園をもっと多くの人に提供できないかと思わず
にはおれません。私は、今はやりのおすしが健康食嗜好としたら、日本庭
園は心のセラピーと関係があるのではないかと思っております。
日本庭園の古い本の1つに、作庭記がありますが、その冒頭に、「石を
立ん事、まつ大旨を心得べき也」とあります。庭づくりの第1歩は、まず
トータルに考えるべきであると説き、また、「生得の山水をおもはえて、
その所々はさこそありしかと、思ひよせおもひよせ立べきなり」とありま
す。この意味は、土地の自然条件を尊重して作者のデザインを凝らす事に
あると言っているのであります。今から1000年も前に、現代にも通じ
るコンセプトをこのようにはっきり定義している古典は他の国には見当た
りません。私どもは通常、この作庭記を念頭に、デザインなり庭づくりを
する訳でありますが、この伝統があればこそ、日本庭園は生き続けていく
ものと信じております。
私事にわたって誠に恐縮ですが、1974年にコロナデルマーという町
で、最初の日本庭園をつくらせて頂きました。あれから早いもので35年過
ぎました。この間、デザインオフィスを細々とやってこれたのは、全く日
本庭園のお陰であり、本当に多くの方々にお世話をおかけしてきました。
南加庭園業連盟の皆さん方には、最初の日米文化会館の庭づくりや手入
れ、また最近修復した庭園工事にもご協力下さり誠に有難うございまし
た。この場をお借りして、厚くお礼申し上げます。
私共のオフィスでは、現在、サンディエゴ、アラバマそしてカンザス州
で3つの公共の日本庭園プロジェクトが進んでおります。最も、折からの
経済不況ですので、そう簡単ではありませんが、今なお、多くのアメリカ
人が日本庭園を求めている事は確かであります。
しかしながら、技術者の老齢化が進み、後継者が激減している状況の
中、果たして日本庭園を請われるままつくっていって良いものかという素
朴な心配もあります。今こそ、胸襟を開いて、一体どうすればよいかを真
剣に考えなければなりません。そのためには、日本の造園技術をもう一
度、学ぶ必要もあるでしょう。また長年培ってこられたノーハウを結集し
て、こちらの住まい方なり自然に対応した日本庭園の技術を作り上げるこ
とも大切であります。
北米大陸には、大小合わせて、250以上の日本庭園があると聞いてお
りますが、現在、その多くが日本庭園の技術者不足で悩んでおります。皆
さんの今までの経験を生かしながら、願わくば日本との共同で、庭づくり
及び手入れの技術者協議会と言いますか、アソシエーションをつくりあげ
る事を提案させて頂きたいと存じます。そして、次のような諸活動を通じ
て、コミュニティとの連携を図り、庭園業の活性化が生れてくると信じま
す。
(1)日本及びアメリカの庭園業界が協力して、低費用の日本庭園づく
りと手入れを目指すこと(2)日本庭園教育のための専門学校あるいはイ
ンターネットによるコースの開設。高校生、JCの学生、大学生を対象と
する。ATCメントープログラムをモデルとする(3)ボランティアそし
てパブリックのためのワークショップを開催して、剪定、土の養生、植栽
など、伝統的な日本庭園の技術を提供し、同時に地球温暖化、グリーンイ
ンダストリーの一助となるような地道な努力をする―の3点。
この不況時だからこそ、ガーデナーのノーハウを存分に生かし、経済活
性化の一助にひとふん張りされんことを切に祈っております。
(連載おわり)
|