世界一周自転車の1人旅:100カ国回り、5年後ゴール―大阪の磯田喜之さん

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旅をともにする「相棒」の愛車とLA滞在中に世話になった浜田幸茂さん(右)と磯田さん。浜田さんが経営するボイルハイツの和食レストラン「お富さん」で久しぶりの日本食を食べ、浜田さん宅に身を寄せて英気を養った

旅をともにする「相棒」の愛車とLA滞在中に世話になった浜田幸茂さん(右)と磯田さん。浜田さんが経営するボイルハイツの和食レストラン「お富さん」で久しぶりの日本食を食べ、浜田さん宅に身を寄せて英気を養った

 世界一周自転車旅行に挑み昨年8月、地元大阪を出発した磯田喜之(28)さんがその2カ月半後にロサンゼルスに到着し在米日本人と交流、小東京に足跡を残した。行く先々で歓待を受け、世界中に友達を増やしている。世界を舞台に約100カ国を5年掛けて回る壮大な1人旅のテーマは、「世界一周の旅を子供たちに伝える」。その思いを胸にペダルをこぎ、前へ前へと進んで行く。          【永田 潤】
 
「人との出会いを大切に」
世界中に友達、一生の財産に

 磯田さんの一人旅は、小学6年生の時の自転車での琵琶湖一周に始まり、日本一周は高校時代の自転車で1度と、オートバイで2度回り経験を積んだ。その後は、四国88カ所の札所を巡る遍路を33日間かけて歩いた。世界一周を16年間の1人旅の集大成と位置づける。
 今回の旅は、自転車かオートバイにするか迷ったが、バイクでは通り過ぎてしまうという「人との出会い」を大切にするために自転車を選択。旅では、多くの人から優しくしてもらう。道案内はもちろん、家に泊めてもらい食事をご馳走になったり、金銭を提供されることもあり、「人の情けを感じる」と感謝に堪えない。今回も最も楽しみにするのが、人との出会い。日本の「親善大使」になり世界中に友達を作り、帰国後も連絡を取り合い一生の財産にしたい。
毎晩テントを張って野宿する

毎晩テントを張って野宿する

 また、バイクのヘルメット越しには味わうことができない自然も自転車をこぎながら感じたかった。川の流れや風の音、鳥のさえずり、虫の鳴く声などを聞くことも旅には重要であると強調する。
 日本を離れたのは昨年8月。愛用の自転車とともに空路カナダ・バンクーバーに渡った。アメリカへ向け南下、昨年11月に小東京に到着した。現在はメキシコに滞在し、その後は中南米、海路でオーストラリア、東南アジア、中東、ヨーロッパ、アフリカ、アジアを経て2014年8月の帰国を予定。名所観光は最小に押さえ、次へと進む。5年間で世界約100カ国、10万キロを走破する壮大な旅だ。
 磯田さんは大学卒業後の進路決定で、小学校教師になるか、世界一周の旅に出るか―人生の岐路に立った。迷った末、「(世界一周は)今しかできず、後悔したくない」と、教職の道を諦めた。旅費の捻出に地元の自動車組み立て工場で住み込みの期間工として4年間働き、400万円を蓄えた。この額では日本に戻るまでに資金は底をつくという。しかし、気に入った国々で長く滞在し、農園やレストラン、酒場で働いて稼ぎ、軍資金を補う。
 経費節約のために毎晩テントを張って寝袋に潜り込み野宿。洗面はガスステーションのレストルームを利用。軽くて持ち運びに便利で、入手が容易なパスタを主食とし、パンなどをかじる食費は一日わずか1ドル以内に抑える。トマトソースに缶詰のミックスベジタブルを混ぜて毎食食べる。ステーキや缶入りのツナを時々食べ、「ぜいたく」も味わう。
 持ち物は、パスポートにノート型パソコン、コンパクトカメラ、水、釣り道具、防寒着、レインスーツ、調理用バーナー、調味料、フライパン、包丁、まな板、フォーク、朝のささやかなぜいたくというインスタントコーヒーなど。最小限に抑えても総重量は60キロに上る。
 
「世界一周の意義」伝えたい
将来は執筆・講演活動に力

イエローストーン国立公園の湖で釣り上げた全長約50センチのトラウト。3枚に下ろし、刺身にして食べた。

イエローストーン国立公園の湖で釣り上げた全長約50センチのトラウト(写真上)。3枚に下ろし、刺身にして食べた。

 世界一周の挑戦者をイメージすると、健康的なたくましい肉体と計画性を持ったスポーツマンを思い浮かべることだろう。だが、磯田さんはまったく逆である。身長171センチ、体重60キロの細身の体には、筋肉はなく、病弱でかぜを引くと1週間は治らないという。食べ物は好き嫌いが多く、生魚は口にしないが、なぜか川や湖で自分で釣った魚は生でおいしく食べることができるという。
 5年以内でのゴールを目指すが、滞在国やその土地、人々が気に入れば、滞在期間を無期延期し自由奔放に生きる。旅の楽しみの一つの「世界の酒を飲み干したい。現地の人と豪快に飲み比べ(て競うこと)がしたい」。単なる地球一周を目標とせず、気の向くままにとことんまで楽しむが、誘拐などの事件や事故に巻き込まれ日本政府の世話になったり、地元の人に迷惑をかけることのないように身の安全に気を配り行動している。
 同じ大阪を発着点として昨年の元日から世界一周の旅をするお笑いタレントの間寛平さんに対し、磯田さんは「よきライバルであり、励みになる。がんばってほしい」とエールを送る。万全のサポート体制で走る間さんを「うらやましい」としながらも、ライバル心を燃やしながら、自らを「侍魂を持った一匹狼」と呼び士気を鼓舞する。
思い出がいっぱいに詰まった旅日記を披露する磯田さん

思い出がいっぱいに詰まった旅日記を披露する磯田さん

 世界一周の夢を叶えるために、これまで定職には就くことはなかったが、この旅を終えれば、生き方を変える決心をしている。磯田さんは幼い頃に母を亡くし、祖母に面倒を見てもらったおばあちゃん子。旅に出てもいつも、老いた祖母の健康を気にする。そして、「苦労を掛けた」という父には、家業のカメラ屋を継ぐ意志を示している。「金儲けは上手い」と自信たっぷりに話し、「楽にさせてあげたい」と親孝行に徹するという。
 「子供たちに分かってもらいたい」と、世界一周の旅をまとめた本の出版を視野に入れ、毎日小まめに日記をつけ写真を撮る。旅日記は、仲良くなった人々からも励ましの言葉を書いてもらい、何よりも大切な宝物だ。冒険的な要素の強いこれまでの数々の旅の経験を生かし、将来は執筆と並行して講演活動にも力を注ぐ。小中学校を中心に全国を回り、夢を与えたい。
 いじめられっこだったが、「やろうと思えば何でもできる」ことを子供たちに伝えるために単独で出た意義のある世界一周自転車旅行。「自分の旅から何かを感じとって、『何かをやろう』という気持ちを持ってもらいたい」。磯田さんは、不定期に旅のブログを更新し、激励のコメントを待っている。応援を心の糧にし、長くて楽しく、時には厳しい旅をこれからも続ける。ブログのアドレスは―
 earthbiker.blog47.fc2.com
さまざまな持ち物を広げる磯田さん

さまざまな持ち物を広げる磯田さん

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