氷山の一角

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 「死が2人を別つまで、愛し合うことを誓いますか」「I do」―
 親族、友人ら約200人のゲストを迎え、海辺のホテルで盛大に催された友人の結婚式から早くも6年が過ぎた。ウェブデザイナーとして働く彼と、PR代理店に勤める彼女。出会って3年目のことだった。
 生まれも育ちもカリフォルニアの2人は、ビーチの近くに住みたいとレドンドビーチにタウンハウスを購入。住宅バブルまっただ中の当時、2人にはぜいたくな買い物だったが、ローン手続きはスムーズだった。
 2年前のパーティーの場で、2人は「Big news」を発表。喜びに満ちたそのパーティーから5カ月後、彼女は出産・育児に専念するためPR企業を退職した。「大丈夫。僕が支えていくから」。そう、力強く話していた彼は、その2カ月後にレイオフされた。
 「大丈夫。すぐに次の仕事が見つかるよ」。彼の前向きな言葉とは裏腹に、半年、1年と過ぎ、恐れていた「住宅差し押さえ事前通告」が届いた。
 小さな子供を抱え、2人はついに彼女の実家へ引っ越しを余儀なくされた。常に前向きだった彼からは、もはや言葉もない。
 友人夫妻はただ「運が悪かった」だけなのか。
 先週発表された7月の加州の失業率は、12.3%。225万人が現在、職を探している。インランドエンパイアではその数も15.1%に跳ね上がり、ロサンゼルス郡内だけでは12.4%を記録した。
 一部専門家は、「国税調査員の仕事が終了したため」と楽観視する意見もあるが、加州の失業率はネバダ州(14.3%)、ミシガン州(13.1%)に続き全米で3番目となった。
 住宅バブル、サブプライムローン、フォークロージャー、レイオフ…。不況の波にのまれてしまった友人夫妻。「今の悩みはお金じゃない」。泣きながら話す彼女によると、職を失い、家族を支えられない失望感から、彼が鬱(うつ)になってしまったという。
 彼らはあくまで氷山の一角にすぎない。長く続くトンネルの出口は、一体いずこへ…。【中村良子】

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