パサデナセミナー会:進藤首席領事が講演、イスラムの世界を紹介

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多くの聴衆を前に講演する進藤首席領事


 今年6月に在ロサンゼルス日本国総領事館に赴任した進藤雄介首席領事が21日、パサデナセミナー会(半田俊夫主宰)に招かれ、「イスラム世界と西洋」と題した講演会を日米文化会館で催した。会場には100人近い人が集まり、イスラム世界への関心の高さをうかがわせた。
 進藤氏は、講演は自身のアラブ世界への赴任経験に基づいた個人的見解であると前置きした上で、イスラムの文化、生活、宗教などについて分かりやすく説明した。
 同氏はまず、イスラム教徒の人口数について触れ、世界で最もイスラム教徒が多い国はアラブ首長国連邦やサウジアラビアではなく、インドネシア(約2億人)、パキスタン(約1・7億)、インド(約1・6億)、バングラデシュ(約1・5億)の順で、東南アジアに集中していると述べた。
 米国内には約700万人のイスラム教徒がいると言われ、世界では約12億人。キリスト教徒に次いで2番目の信者数を誇る。またその数は確実に増加を続け、2025年までにはキリスト教徒の数を上回り、世界一になると言われていると話した。
 
イスラームとは
「神に帰依すること」

 
 イスラム教は、ユダヤ教やキリスト教と同じく一神教。旧約聖書や新約聖書は神について書かれたものである一方、コーランは神そのものの言葉が書かれていると考えられているため、最高の聖典とされていると述べ、「イスラーム」という言葉は、「神に帰依する」ことであり、神に絶対的に服従することを意味しているという。
 進藤氏は、「イスラム教では、何かの儀式の時だけではなく、生活のすべてが『個人と神様との契約』であるシャリーア(法体系)に基づいている。この神との約束を守ることで、来世で天国に行けるとの考えがある」と、宗教と生活の密接な関係、また来世の存在の大切さを説明した。
 それらを踏まえ、「自爆テロをする人たちは、『この世での生活は苦しいが、来世では幸せになれる』との考えが背景にある」といい、彼らの行為を理解するには、イスラム教徒の思想を理解する必要があると説いた。
 また、主な信仰行為として「信仰告白」「礼拝」「断食」「巡礼」「喜捨(きしゃ)」などがあり、礼拝は夜明けから一日5回。日によって夜明けの時間が変わるため、毎日礼拝の時間が変わる。「祈りの時間になると店やレストランは閉じてしまうので、ロサンゼルスの人が毎朝渋滞情報を調べるように、イスラム教徒圏では新聞などで祈りの時間を調べる必要がある」と、実際にサウジアラビアで生活した経験をもとに話した。
 断食をするラマダーン月については、「日中断食し、日没後から食事をするため、この月は他の月に比べ食料品店の売り上げが逆によくなったり、体重が増えてしまったりする人が多い」と話すと、会場からは笑いが漏れた。
 また、ハッジと呼ばれる巡礼の日には世界から約200万人がメッカに集まる。進藤氏は、「一生に一度は巡礼に行くことが義務づけられている」「巡礼に行くと、名前にその称号がもらえ尊敬される」ことなども説明。また、喜捨とは「神への税金」とも呼ばれていると説明した。
 「規則に反し店などを開けていたり、服装に乱れなどがあった場合、一般の警察とは別にいる『ムタワ』と呼ばれる宗教警察にムチで打たれたりする」など、イスラム教が規則に厳しいものであることにも触れた。
 宗教的義務の一つである女性のベールについて、コーランには、「美しいところは隠しなさい」と書いてあるだけで、ベールをかぶらなければならないと書いてあるわけではないといった話や、4人まで妻をもてるが、これはかつて侵略の被害などで多くいた未亡人や子供を救う意図があったことなどにも触れた。また、結婚の際に男性は女性に大金を支払わなければならず、お金のある人のみが複数の妻をもて、男性が余ってしまっていることから、同性愛者の数も多いと話した。
 刑罰に関しては、基本的に「目には目を」という考えがあり、物を盗んだ場合は手首を切り、人を殺した場合は首を切る。現在も公開処刑が行われており、罪が重い場合は見せしめも行われる。進藤氏は、「そのためか、サウジアラビアなどは非常に安全で、犯罪件数は日本より低い」と述べた。
 
アルカイダの変遷
組織からブランド化へ

 
 同氏はまたアルカイダについても触れ、かつてはピラミッド型でトップからの命令を下が遂行していたが、「現在では組織というよりも、アルカイダ運動が広がり、アルカイダという名前を名乗ることで資金が手に入りやすくなるなど、名前がブランド化している」と話した。

講演する進藤首席領事


 またアルカイダと日本との関係に関しては、2003年に日本が自衛隊のイラク派遣を行って以来、過去3回ほど日本を名指しで非難する声明が出されているが、基本的にアラブ諸国は親日的だと述べた。その理由を、「広島、長崎への原爆など、日本はアラブと同じくアメリカから攻撃された被害国であるとの考えがあるから」とした。
 また、タリバンとテロリスト「アルカイダ」は別であることにも触れ、「アフガン戦争は、テロと闘う戦争ではなく、アフガニスタン最大の民族であるパシュトゥーン人の民族紛争」と強調した。
 
イスラムフォビアの拡大
西洋諸国内に誤解も

 
 最後に、西洋諸国内にイスラム教やイスラム教徒に対して極度の不安や嫌悪を感じる「イスラムフォビア」が広がっていることに触れるとともに、「欧米がイスラムを誤解している面がある」と述べた。その例えとして進藤氏はイデオロギーの闘いと訴えるブッシュ前大統領の発言、「自由を信じて広げる欧米と、自由や人権を否定するアルカイダ」を例に上げ、「イスラム教徒過激派がアメリカを敵視するのは、アメリカが自由の国だからではなく、キリスト教の国だからでもなく、イスラムの地(サウジアラビア、アフガニスタン、イラク)に米軍を駐留させ占領しているから」で、アメリカ側に誤解があるとし、オバマ大統領が強調する「米国とイスラム教徒との新しい始まり」について、今後具体的にどのような行動を取るのかに注目したいとまとめた。
 参加者からは、「実際に生活した経験から話を聞けたので興味深かった」「戦争は無知から起こるものなので、多くのアメリカ人にももっとイスラム教のことを学んでもらい、互いの理解を深めてもらいたい」「人間レベルで付き合う大切さを学んだ」などの声が聞かれた。
【中村良子、写真も】

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