佐賀県海外使節団が訪米:大学生20人が起業家精神を学ぶ

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全米日系人博物館のツアーを終えた佐賀県の「21世紀海外使節団」に選ばれた20人の大学生と関係者


 佐賀県が高校生や大学生を海外に派遣する「21世紀海外使節団」に選ばれた20人の大学生(徳島大作代表=佐賀大学)が6日から加州を訪れ、起業家らによるセミナーやベンチャー企業訪問などを通じ起業家精神を学び、19日、帰国した。
 同事業は、大隈重信が活躍した幕末維新期の「遣欧・遣米使節団」を再現し、日本の将来を担う国際人の育成を目的としたもの。事業費は、地方自治法施行60周年記念貨幣の発行に伴い、地方分権振興や地域活性化の取り組みを支援するため総務省から交付される「地方分権振興交付金」を財源としている。

UCLAの学生と意見交換する使節団


 一行は、UCバークレー経済学部のフラタニティ「Delta Sigma Pi」の学生との意見交換をはじめ、起業家や技術者らのセミナー、シリコンバレーで働く日本人技術者を支援するNPO団体「JTPA」主催のカンファレンスなどに参加。グーグルなど大手IT企業も訪れ見聞を広めるとともに、北加佐賀県人会との交流も満喫した。
 13日にはロサンゼルス入りし、南加佐賀県人会との懇談会、ソニーピクチャーズやUCLA、在ロサンゼルス日本国総領事館などを訪問した。
 使節団の代表である佐賀大学経済学部3年の徳島大作さんは、大学で地域貢献活動に力を入れる。「自分がどこにいるかではなく何をするか、自分が社会にどういう影響を与えられる人間になれるかが大切」と、サークル仲間と空き店舗の多かった商店街などを利用し、子供が自由に通える寺子屋の運営を始めるなど、強い起業精神を持つ。
 多くの起業家が集まるシリコンバレーへの留学を考えていた時、同事業の話を聞いた。「どんな人が成功し、成功する人はどんなマインドを持っているのか、そしてどういう過程で自分のビジョンを叶えていっているのか、肌で感じたかった」という。

世界一の蘭生産者マツイ・ナーサリーの創設者アンディ・松井さんの話を聞く使節団


 北加で話を聞いた世界一の蘭生産者、アンディ・松井さんのグローバルな視点、また世話になった地域社会への還元、マーケティングの基本を押さえたビジネスなど、「かっこいいと思わせてくれる大先輩に出会えたことに感銘を受け、思わず泣いてしまった」。徳島さんはこの事業で多くの刺激を受け、「グローバルな視点を持ちつつ、佐賀という地域に根ざしたビジネスに携わっていきたい」と意欲的に述べた。
 昨年11月に学生3人らとITベンチャーを起業した東京大学教養学部3年の大川内直子さんは、UCバークレーの学生との交流の中で、彼らのハングリー精神を強く感じたといい、「明確に将来のビジョンを持って、それに向かって突き進んでいる姿に衝撃を受けた」。起業に対する強い思いとともに、「失敗を恐れないチャレンジ精神があり、それらを育成する制度がアメリカには整っていると感じた」と話した。
 大川内さんは、「アメリカの学生たちは、自分で自分をブランディングしていくことが軸にあるから個人が強いのだと思う」と、調和が重視される日本との違いを指摘。「一方で、自分の弱い部分を見せて周りから助けも得ており、ネットワーク作りが非常に上手いと思った」と、多くを学んだ様子だった。
 一行は16日、全米日系人博物館(JANM)を訪れ、日系移民の歴史や現状、また米国内における日系社会の役割などを学んだ。

全米日系人博物館で日系移民の歴史などを学ぶ使節団


 ツアーを終え、早稲田大学政治経済学部4年の田中修平さんは、「アメリカは『人種のるつぼ』といわれているので、それぞれが自由に生活しているのだと思ったが、皆自分自身のアイデンティティーを背負って生きていると学んだ」。また、「日本人に対する差別が戦後10年ほど続いたとの話を聞いて、とても衝撃を受けた」と述べるとともに、過ちを認め、日系人に謝罪したアメリカの姿勢を学び、「日本では、韓国や中国から来ている人に対してまだ冷たい視線が残っている部分もあるので、そういうのを将来変えていけたらいい」と感想を述べた。
 東京工業大学工学部2年の桑原宏介さんは、約1カ月前に西海岸を一人でバックパック旅行した際、一部地域で日本人に対する風当たりの悪さを感じたといい、「日本語を話す人が全くいない時期にアメリカに渡り、一からすべてを築き上げた先輩たちはもっと大変だったのだろうと感じた」と述べ、アメリカの地で日系社会を築き上げた彼らの歴史を学び、「同じ日本人として非常に誇りに思う」と感想を述べた。
 学生とともに訪米した佐賀県統括本部政策監グループの宮崎祐弘さんは、「学生にはいろいろな刺激を吸収して、将来は佐賀および日本などを支える人材に成長してもらいたい」とエールを送った。また、県人会メンバーからの支援に感謝の言葉を述べた。
 南加佐賀県人会の中西和彦会長は、「県の事業としては今回一回きりだが、今後県人会として年に2人くらい学生を受け入れ、同様なプログラムを続けていきたい」と今後の抱負を述べた。
 
 参加した大学生は(敬称略)、▽大塚一翼(佐賀大学理工学部)▽田中修平(早稲田大学政治経済学部)▽西島俊太郎(オーストラリア国立マッコーリ大学)▽宮下耕吉(佐賀大学理工学部)▽川副陽子(佐賀大学医学部)▽柴田佳織(佐賀大学医学部)▽福島由里子(久留米工業校等専門学校専攻科)▽徳島大作(佐賀大学経済学部)▽永石祐樹(慶応義塾大学環境情報学部)▽大川内直子(東京大学教養学部)▽桑原宏介(東京工業大学工学部)▽篠原佑太郎(早稲田大学スポーツ科学部)▽眞崎万里(同志社大学法学部)▽矢野彩美(関西外国語大学外国語学部)▽笹山尚(立教大学経済学部)▽松永祥典(佐賀大学経済学部)▽山下雄登(横浜国立大学経済学部)▽梅崎恵理奈(佐賀大学文化教育学部)▽原田かれん(東京女子大学現代教養学部)。募集20人に対し応募は計262人と、選考は13倍の高倍率となった。また大学生の他に高校生10人を対象とした事業もあり、高校生は1カ月をかけ、アジア、中東、欧州、南米、北米など10カ国を巡っている。【中村良子】

 

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