帰化市民の務め

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 現役が22年間の続投に終止符を打って次期市長選に不出馬を発表したことに伴い、先日シカゴ市の市長や市議の選挙がおこなわれた。
 市長が引退を発表するや、次々と引退する市議が増えて15もの区で新しい議員が選出されることになり、表現は汚らしいが獣の死体から寄生虫が這い出してくる図を見るようである。
 年齢も理由にはなるだろうが、可愛がってくれたボスが居なくなるなら居心地の悪くなる前に次の生活設計を…と言う日和見引退も多かったようだ。
 今回は珍しく日系三世と四世が一人ずつ出馬した。いずれも弁護士で女性。残念ながら居住区が違うのでいずれにも投票は出来なかった。久しく日系の政界進出を見なかっただけに期待を寄せたが善戦空しく2人とも落選。
 湖畔沿いの地盤から立候補した若いエミリー・スチュワートさんなど11人の候補者の中から3位につけたのだから初出馬としては上々といわねばならないし、結果はともかく今後が楽しみである。幼い頃、仏教会の日本語スピーチ・コンテストなどに出場していた彼女を知っているだけに、ボランティアと共に真摯な態度で激戦を戦いぬいた彼女に大きな拍手を送りたい。
 著名な政治評論家が、個人的な会話ではあったが「エミリー・スチュワートは正しいビジョンを持っている」と評価していたことを、身内を褒められたような気持ちで聞いたことである。
 カリフォルニア州などとは違い、シカゴの日系市民は少数民族であるアジア系の中の、さらに少数民族である。数がものを言う民主主義のシステムの中で、その声を政治に反映させ、暮らしを改善させてゆくためには、日系の枠を出た上で、さらに小さな声を拾ってくれるリーダーの台頭が待たれる。
 選挙の日は偶然スタンドバイで陪審員の呼び出しがかかっていて、雪の降る中を早朝6時半に投票を済ませ、9時過ぎに法廷に入るというスケジュールになってしまったが、帰化市民の筆者は、ささやかながら1日に二つの米国市民としての務めを果たすことができた。【川口加代子】

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