心理の専門家がセミナー開催:「災害後のこころのケア」、被災者でなくても起こるトラウマ

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アートセラピー体験では、参加者同士、自分の描いた世界を紹介し合った。

 ロサンゼルス周辺に勤務する心理の専門家らが3日、「災害後のこころのケア」と題した無料セミナーをトーレンスで開催した。約30人の参加者を前に、被災者でなくてもトラウマになるのか、災害後の子どもや高齢者へのケアなどについて分かりやすく解説し、対応策も合わせて説明した。
 東日本大震災の発生当初から、テレビやインターネットで流れる凄まじい映像の数々。実際に被災してなくても、映像を目にするだけでトラウマ的症状(PTSD)が現れる可能性はあるという。
 心理カウンセラーの河瀬さやかさんは、無料のカウンセリングを提供しているが、現在までに問い合わせは1件もない。しかし、日本人コミュニティーの中でよく耳にするのは「映像を見て夜も眠れない」などの声。現段階で大丈夫と思っていても、トラウマ的不安障害は月日が流れるにつれでてくる。早期に症状や対策などの知識を提供したいとの思いから、河瀬さんはじめ、診療内科医の久賀谷亮医師、心理カウンセラーの児玉裕美子さん、コーエン・祥子さん、アートセラピストのウルハウゼン円さんの5人が集まった。
 子どもや高齢者、普段からストレスや不安障害を抱えている人に特に心掛けてもらいたいことは、「悲惨な映像を見続けないこと」。映像を見て、「自分にも同じようなことが起こるのでは」と子どもが心配したら、親は「そんなことは起こらない」と否定するのではなく、「何があっても守る」意志を伝え、安心感を与えることが重要になる。
 米国から被災地に行き支援活動を予定している人には、被災者のニーズを考えて行動し、相手の準備ができた時に行くことを呼び掛けた。「助けたい」という思いが強ければ強いほど、「何かしたい」との気持ちが先走りするが、実際は、現地の被災者が話したがらないことも多い。そんな時は「ただ隣にいてあげること」。言葉を交わさなくても「あなたが必要な時、私はそばにいます」という姿勢が、一番の支えとなる。
 また震災関連の情報も友人や家族と共有することで、自分の中に封じ込めるのを防ぐことができる。日本人が多いロサンゼルスでは、人とのつながりを大切にし、日本人同士や同郷人とのコミュニティー作りが効果的だという。
 セミナーでは、参加者が画用紙に自分の世界を絵や記号で描き、隣に座った人にアートを通して自分を表現するアートセラピーも体験した。
 参加者のひとりガーデナ在住の西山ゆう子さんは、「自分の子どもに接する時の参考になればとの思いから参加した。今後役立たせていきたい」と感想を述べた。
 ロングビーチ在住の坂田智里さんはメンタルケアの分野に携わり、震災後、「自分にできることは何か」を考えていたという。患者の中には「地震が怖いから日本に帰りたくない」と言う子どももおり、「セミナーで勉強したことを治療に生かしていきたい」とした。またオレンジ郡でもこのようなセミナーの開催要請もあり現在検討しているという。
 この日、カンボジア内戦で家族が殺害され、その後、過酷な状況下で強制労働をさせられた経験を持つカンボジア人のゲストスピーカーも参加した。35年経った今も恐怖と深い悲しみに襲われた当時の記憶が甦り、悪夢を見るという。しかし、家の中に引きこもらず同郷人とコミュニケーションをとることで、少しずつトラウマの記憶を消していったと自らの経験を語った。東日本大震災の映像をみた時、天災と人災とで違うが、トラウマの影がつながり、失った家族のことを思い出したという。「日本の被災者も時間がかかるかもしれないが、少しずつ乗り越えていってほしい」、と日本の復興を願った。【吉田純子、写真も】

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