「できる」ということ

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 もし新幹線がなかったら。考えもつかない非効率な社会が想像できます。安全性や効率性だけでなく環境を考えても優れた乗り物です。日本の高度成長の大きな牽引になったことは間違いありません。同じ数の乗客を車で運ぶとしたら、毎年1万人を超える死傷者がでると試算されてもいます。アメリカがフリーウエー中心の車社会を目指して鉄道をなくしていった時代に、日本では新幹線網が敷かれることが計画されました。そして50年近い日時を経て、青森から鹿児島まで新幹線が開通することとなりました。
 この新幹線の生みの親と呼ばれているのが島安次郎とその息子、島秀雄です。1939年に踏み切りのない広軌の線路を新設し、東京と下関間を9時間で結ぶ弾丸列車構想をまとめたのが安次郎でした。ところが戦争と安次郎の急逝で中断された構想は、息子の秀雄に託されました。秀雄は当時の常識を覆して電車列車方式を採用し、騒音や振動を見事に抑えたばかりでなく、回生ブレーキなどの画期的な環境技術を持った新幹線を常識破りの速さで開発し、開業に持ち込んだのです。そして新幹線は開業以来一度も大事故を起こしていないのです。
 「『できる』ということは、『できない』ということよりも簡単だ」と、島秀雄は言いました。それはこのような理由です。「できる」ということは、数ある中からひとつだけ可能な方法をみつければ良いのに対し、「できない」ということは、多くの選択肢のすべてが不可能であることを証明し、つぶしていく作業が必要だからです。ですから、「できる」ということは簡単で、「できない」と言えることは難しいのです。「できない」ということを安易に嘆くのではなく、ひとつでも、ちいさなことでも、「できる」ことを見つけて実行していく。素晴らしき先人の教えに、私たちはさらなる「できる」を発信する必要があるのではないでしょうか。【朝倉巨瑞】

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