姉との思い出

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 姉の誕生日が過ぎてしまった。50歳になった。つまり半世紀。えー! あの姉がねえ、と不思議な感じだ。ここのところ、幼い頃の姉が夢に出てくる。もしかしてあんなに喜んだことって、あれ以来ないかも、とさえ考えてしまうある晩の思い出がある。
 おそらく当時は、まだ姉が小学3年生、2つ年下の僕が1年生ぐらいの頃だと思う。母の作った夕食を前にテーブルに腰掛けようとしたら、裏口から笑顔の父がどでかい箱をかついで帰宅する。姉へのお土産らしい。何だろう? 不思議に思いながら、二人で箱を開けてみる。するとひょっこり中から現れたのは、ブランド・ニューの大きなパンダの縫いぐるみだ。表面の肌触りも匂いもいい。
 当時は過剰なパンダブームで、姉は大喜び。僕も一緒に喜ぶ。夕食そっちのけで、その縫いぐるみを抱き合ったり、胴上げしたり、二人でテーブルの回りを行進し始める。名前をパンダちゃんと名付け、「パンダちゃん、パンダちゃん」と叫びながら、何十回は回っただろう。宙に舞うパンダちゃんも喜んでいるようだ。微笑んでた母も、あまりのうるささに、「いい加減にしなさい!」と叱り出す。
 あとから詳細を聞くと、姉はあるお菓子メーカーのプレゼントに応募していた。そしてなんと特賞を見事に当てたのだ。その後同じパンダを見掛けたことは一度も無い。凄い倍率だったに違いない。姉はそれ以来いろんな懸賞品を当てたが、そのパンダちゃんを当てた時ほどの感動はなかったらしい。現在、そのパンダちゃんは、虫に食われ、表面がボロボロになったが、未だ大事に姉の家の居間にいるらしい。
 姉にも自分にも子供は居ない。年老いた両親からは、こう言われている。「いつかもし自分たちが亡くなったら、血のつながっているのはあなたたち二人だけだから、仲良くしなさいね」と。
 性格も考え方も全く異なる姉だが、震災後、メールのやり取りは多少は増えた。これからは、もうちょっと頻繁に連絡しようと思う。【長土居政史】

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