決死の脱北

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 能登半島沖で脱北者9人が乗った小型木造漁船が発見された。韓国を目指した一行の航海は、非力なエンジンで救命胴衣はおろかGPSもなく、飲み水も尽きて無謀なもの。決死の覚悟だったはず。食糧事情など過酷な生活が、想像できる。
 脱北策は陸路が多いというが、警備が厳しくなっているという。東南アジア経由の2、3カ月、数千キロの遠回りは、かえって危険。捕まれば、強制送還され迫害の恐れがあるため、今回は海路を選んだと考えられている。
 命がけで漂流を続けた5日間。転覆など不安は尽きなかったに違いない。冬場は荒れる日本海を見越し、この時期に出たのだろう。天候は良く、9人皆無事に助けられ、健康状態も良好で幸運だった。希望の韓国へ移送されることになるようで、人道的な観点から判断して迅速に対応し、橋渡しをした日本と、受け入れる韓国の両政府を称えたい。
 当の脱北者は漁民で、人民軍に所属しているという。生活が保障されるている身分でありながら、国を捨てる事情があるのは異常である。
 国内は梅雨による長雨や台風の水害で、農産物に多大な影響が出て食糧事情は深刻だという。政府は、飢餓など貧窮する国民をどう思っているのか知りたい。盛大なパレードで軍事力を誇示する金があれば、餓死者を救えるはずだ。元は一つで南北分断後、二国にここまで貧富の差が出たのだろうか。
 この国には依然、ら致された日本人が取り残されていることを忘れてはならない。そして、無事を祈って帰りを待つ被害者家族がいる。老いた親は、国難を知るたびに悲しんでいることだろう。心情を思うと胸が痛む。難しい問題だが、解決しなければならない。
 今回の脱北者には日本でゆっくりと休み、おいしい物をいっぱい食べていい思い出を作り、新天地では幸せに暮らしてもらいたい。危険な航海中に保護した命の恩人は、日本の漁船。韓国に9人の親日家が新たに生まれることになる。喜ばしい。【永田 潤】

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