裏と表の落差

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 最近、某芸能人がシカゴを訪れた。東日本大震災の義援金を集めるためのショーを各地で開催しているそうだ。
 知名度の高い人(仮にA氏としておこう)だけに前人気は上々だった。仕事の都合で出かけられなかったが、このA氏の前座を務めた地元和太鼓グループの子供たちの付き添いで参加した友人からショーの様子などを聞くことができた。
 「ショーはともかく、がっかりしましたね。Aがあんなに態度の悪い礼儀のかけらも無い人だとは思いませんでした。私たちは前座をやらせてもらうのだからと、開演前によろしくお願いします、と挨拶にいったのですが、こちらを見ようともしないで『あァー』と一言。演奏が済んで、子供たちが揃って『有難うございました』と挨拶をしたのに、ご苦労さんの一言もなし。一瞥するでもなく、子供たちの前を素通りして行きましたよ」
 たかが日系太鼓グループの子供を相手に挨拶するのも面倒、ということか。
 A氏の真意は読めないし、体験者から聞いたとはいえ私がその場に居たわけではないのだから、話だけで判断するべきではないだろうが、同じような感想をほかの数人からも聞いたので、まんざら一方的な批判とも言えまい。
 太鼓にしても日本舞踊などの日本の伝統芸能のお稽古事から「挨拶」というものを省くわけにはいかない。だから生徒たちは練習や演奏の前には「よろしくお願いします」、練習やパフォーマンスが済めば「有難うございました」と日本語で挨拶することから教えられている。
 A氏の舞台やカメラの前での笑顔のサービスと、楽屋での態度の裏表の落差が激しすぎたようだ。
 人間いつもニコニコできるものではない。疲れているときもあればむかついていることもあるだろう。相手と状況によっては使い分ける顔の二つ三つは誰でも持ち合わせている。
 しかし、一生懸命に前座を務めた子供たちへの労わりの気持ちがあれば、「ご苦労さん」という言葉の一つぐらいは自然に出てくるはずである。
 この日の子供たちへの教訓は「大きくなって有名になっても、あんな大人にはならないように」でした。【川口加代子】

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