肩書きのお話

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 「さて、あなたにはどのようなタイトルを付ければ良いのかな」
 直属の上司が職場を去って2カ月余り。後任が決まらないまま幾つかの仕事は必然的に私のデスクに回ってくる。そこで所長が私に新しいタイトルをくれるという。常々やたらと肩書きを後生大事にする人に反感をもっていることもあり、別にタイトルなど無くても私の仕事には一向さしつかえもないので、
 「給料を上げてくれるのなら辞退はしませんが、タイトルだけなら要りません。仕事は今までどおりやりますので、心配ご無用です。第一、名刺の刷りなおしなど不経済ですから」と答えた。
 「それにしてもタイトルが無いのでは外部の人に紹介もし難いし…」
 昇給など職場の経済状態を考えてみても無理な話で、給料を上げるつもりなどさらさら無い上司は、苦笑いをしながらもぞもぞ呟いた。あと何年この職場にいるか、いやクビにならずに置いて頂けるかわからないが、これ以上責任ばかり負わされてはかなわない。30分程のミーティングで、結局新しいタイトルはお断りしたが、仕事だけは断りきれずに増えた。ヤレヤレである。
 タイトルと言えば、先日は驚いたことがある。
 ある団体の責任者X氏に急用があって、休日であったこともあり、彼の携帯電話にかけた。あいにく応答がなくてメッセージを残したのだが、アンサーリング・マシーンの応答が「私はX、ABC協会のCEOです」
 一瞬、間違って彼のオフィスにかけてしまったのかと慌てた。どれだけ仕事熱心な人かは知らないが、個人持ちの携帯電話にまで仰々しくタイトルを吹き込む神経が理解できない。
 聞くところによると、彼は自分の肩書きを非常に大切にしており、自己紹介の時には必ず名前の後に肩書きを付けることを忘れないそうだ。それにしても家族が「帰りにミルクとブレッドを買ってきて…」と頼みたくても、こんな肩書き付きのメッセージではさぞ頼み難かろうと思うのですが。【川口加代子】

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