「もしや?」と思ったら

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 先月、ロサンゼルス・タイムズ紙に、「妻の殺害容疑で逮捕された96歳夫、『最近、混乱していた』と近隣住民」との見出しで、殺人事件の記事が小さく掲載されていた。
 記事によると、鈍器のようなもので殴られ死亡した80歳になる妻の遺体が、ウエストロサンゼルスのアパートから発見され、同居する96歳の夫が殺害容疑で逮捕されたというもの。
 家族の話では、夫婦はとても仲むつまじく、夫婦関係に問題はなかったが、最近夫は、「妻がお金を盗んでいる」と思っていたという。また近所の住民は、死亡した妻から以前聞いた話として、「ご主人はここ最近『混乱』していて、起こってもいないことに対して突然怒り出すようになったと言っていた」と、テレビの取材に答えた。
 この記事を読んだ瞬間、3年前に取材したアルツハイマー病の家族を介護するケアギバー(介護者)の言葉を思い出した。「お金やものを盗んだと疑われる」「自分の記憶が消えていくことに対していらだちを感じ、怒りっぽくなる」「暴力を振るわれる」など。
 全米アルツハイマー協会の統計によると、現在、米国内には520万人以上のアルツハイマー病患者がおり、2030年には、加州の55歳~74歳のアルツハイマー病患者数が2倍に膨れ上がると予想している。
 警察は後に、「殺害動機は見当たらず、容疑者が認知症に冒されている可能性が高い」として、健康診断を受けさせるとした。
 兆候があったのだから、早めに病院で診断を受け、ソーシャルワーカーのサービスを受けていたら、妻が命を落すことも、夫が愛する妻の命を奪うことも、なかったのかもしれない。そう思うと、胸が痛む。
 アルツハイマー病は、誰にでも起こり得る病気。家族や友人の言動を見て、「もしや?」と思ったら、病院や福祉団体に連絡をしてほしい。リトル東京サービスセンター内にある「日系ディメンシャ・ネットワーク」では、病気に関する情報提供のみならず、介護者の心のケアなどさまざまなサービスを提供している。【中村良子】

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