ボーゲル博士の「鄧小平論」

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 アメリカの東アジア研究の権威が次々と逝去している。さる11月1日には、R・スカラピーノ・カリフォル二ア大学バークレー校名誉教授(91)が他界。昨年11月にはC・ジョンソン同大学サンディゴ校名誉教授(79)も亡くなっている。
 そうした中でハーバード大学名誉教授のエズラ・ボーゲル博士(81)一人が、エネルギッシュな研究・執筆活動を続けている。世界的なベストセラー、「ジャパン・アズ・ア・ナンバーワン」から32年目、同博士が新著を出した。
 タイトルは、『Den Xiaoping and the Transformation of China』(鄧小平と中国の転換)。テーマは、中国が孤立した教条主義的な共産主義国家からどう脱皮し、世界第2の経済大国になったのか、だ。
 博士は、そのナゾを解くカギを「改革・開放政策」を強引に推し進めた鄧小平に求めた。日本を経済大国にしたのが「Japan Inc.」だとすれば、中国を経済大国にしたのは「鄧小平」というわけだ。
 毛沢東の怒りを買って失脚、地方の村に幽閉の身となった鄧小平は、「このままでは中国は貧困から抜け出せない」と確信する。のちの「改革・開放」構想はこの時から芽生えていた。
 「復権」した鄧小平は、78年、79年と日米を訪問する。そこで見聞きしたことは、「改革・開放」路線の正しさを再確認させた。
 日本で会った新日鐵の稲山嘉寛氏や松下電器の松下幸之助氏たちは異口同音に「侵略で中国人に迷惑をかけた。万難を排して中国の近代化を支援する」と誓い、実行に移した。
 知日派のボーゲル博士はこう書いて憚らない。
 「鄧小平が中国の最高権力者として君臨した時代、中国の近代化で日本ほど中国を励まし、助けてくれた国はほかにはない」
 知日派アメリカ人学者の客観的な歴史観が冴え渡っている。【高濱 賛】

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