心の再生元年、2012年

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 日本では電車の中づり公告に、このようにしゃれた文章が下げられている。

 久し振りの外出。途中で乗ってきた初老の女性に席をゆずろうと腰を上げた。
 「ありがとう。いいのよ、次だから」
 次の駅でも降りない。上目遣いに眺める。…悪かったかな気をつかって…
 女性は五つ先の駅で降りるときに私の肩に軽く手を当てた。
 「赤ちゃん、お大事にね」
 驚いた。私のおなかは3カ月、いちどに不安が消えた。

 混み合った車内で気持ちがいらだつとき、こんな文章を読んでほっと肩の力が抜け気持ちがほぐれる。
 狭い国土に大勢の人々が肩を寄せ合って生きてきた日本。思いやりを取ったらギスギスした社会になり、とても生きてはゆけない。経済が発展し、物が豊かに出回るようになり、自由競争の中で格差が広がった。自分だけがよければ…の風潮が広がり、若者は郷土を離れ核家族が増えた。お金があっても、たくさんのものに囲まれても、語り合える友がなく喜びや悲しみを共にする家族がいなければ生きていることが空しい。大都会の「東京砂漠」では電車の人身事故が増えた。ほとんどが自殺者だ。
 昨年、ブータンから若い国王と王妃が来日し、各地でのお二人の言動は多くの感動と共感を呼び起こした。国民すべてが思いやりを大切にし、国民総生産ならぬ国民の幸福度を上げることに力を注ぐ。
 東日本大震災では、人々の助け合い、自己犠牲、震災のさなかでも列に並ぶ克己心、家族の大切さ、「きずな」の価値、見失っていた多くのことに気付かされた。いま多くの人々が本当に大切なのは何か、幸せとは何か、を自分に問いかけ始めている。
 2012年は日本人の心の建設、心の再生が始まる年である。
 人生には何が大切なのか、家族は、友人は、仲間は…それぞれの大切さを噛み締めて深夜の初詣。穏やかに明けた新年が佳い年であることを祈りつつ手を合わせた。【若尾龍彦】

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