テディベアといっしょに

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 林間のキャンプ場やハイキング中はもとより、山里ちかくの住宅街でクマと出くわしたらびっくり仰天して当たり前。パニックになるなといわれても、無理な相談。一番いいのはクマに出くわさないことだが、万一出くわしたら冷静に構えてゆっくり方向転換し、静かにその場を離れるのが最善策という。
 飲まず食わず、巣穴の中で4カ月ほど過ごして冬眠から覚め、空腹を満たすために手っ取り早く民家に近づこうとするクマがいても不思議でないほどに、彼らの自然環境は狭められている。農作物や人畜に害をもたらすとの理由で行なうクマ退治よりも、クマの習性をよく知り、森の再生を図るほうが先決で賢明な策。
 その昔、大いなる山の神として崇拝され、畏敬と感謝の対象とされてきたクマ。アイヌしかり、アメリカインディアンしかり。「カムイ・イオマンテ」の儀式、そしてインディアンの焼き物や宝飾品にはクマのモチーフが好んで用いられている。さらにカリフォルニア州の州旗はグリズリー(ハイイログマ)の大きな絵柄だし、UCバークレーやUCLAのマスコットがクマなのも、偶然の一致だけではないだろう。
 力強く、利口で、魅力的なクマ。近年は地上の領分から追われる身となったが、一方で文学、芸術、神話や伝説などの分野では広く愛され続けている。テディベアの縫いぐるみとともに育った人もいれば、童話「くまのプーさん」に親しむ子どもも多い。落語にも八っさん(八五郎)の相棒としてクマさん(熊五郎)が登場。こちらのクマさんは、頭は少々弱いが人間味の深い愛嬌者として人気だ。
 4月になってロサンゼルス郊外のラクレセンタ地区に連続して現れたクマは、グリズリーよりも小型でおとなしいアメリカクロクマだが、危険な野生動物に変わりはない。目と目が合えば、「ガンをつけたな!」(関西なら「メンチきる」)とばかりに、襲ってこないとも限らない?
 クマとの対面は、動物園で愛くるしいジャイアントパンダを観察するのが一番か—。【石原 嵩】

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