トニー・スコット監督

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 先月トニー・スコット監督が亡くなった。とてもショックであった。
 86年のミネソタ留学時代に見たトム・クルーズ主演映画「トップガン」は度肝を抜かれた。厳しい海軍学校の生活で戦闘パイロットたちが成長していく姿を描いたドラマだ。美人教官との恋愛、クラスメートの死…。特にドッグファイトのシーンは迫力満点だった。スタイリッシュな映像にクールな音楽も素晴らしかった。さすがハリウッド映画だ。スケールの大きさに感動した。
 その後トニーは、「ビバリーヒルズ・コップ2」「デイズ・オブ・サンダー」「クリムゾン・タイド」「アンストッパブル」と大作娯楽映画を監督し続けた。兄のリドリー・スコットも「エイリアン」「ブラックレイン」「グラディエーター」「アメリカン・ギャングスター」「プロメテウス」を監督し、二人揃って凄い兄弟である。
 今から17年前の1995年12月にアナハイム球場で連日に及ぶ長時間の撮影に参加した。トニーが監督した野球スリラー映画「ザ・ファン」だ。何千人ものエキストラの一人だったが、日本人記者役で主役たちの近くでしっかりと緊張しながら演技した。
 野球帽をかぶり、ポケットがたくさんついている作業服ベストを着たトニーが現れた。スタッフに指示したり、脚本を見直したり、時には地べたに着きながらカメラアングルをチェックしたり、まさに汗をかきながらせっせと働いている。目が合うとニコリとし、イギリスなまりの英語で、もう一度撮るから楽しくやれよ、とわれわれにも冗談を交えながら声をかけてくる。
 ハリウッドの大監督はきっと、椅子にデンと座り、威張り散らしていると想像していた。ところが、とてもフレンドリーで、一緒に物作りを楽しんでいる職人さんという印象だった。なるほど、これでいいんだと学んだ。その後、自分は制作コーディネーターの仕事では、 釣り具屋で買った似たようなベストを着るようにした。実用的でなかなか便利なのだ。トニーの真似しただけで爽快な気分になった。
 世界中の多くの映画ファンに夢を与えてくれてありがとう。冥福をお祈りします。【長土居政史】

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