アメリカンドリーム

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 小学校レベルの教育しか持たない両親の下にメキシコで生まれ、幼少期にアメリカに移民してきた少年は、10代のころからアルバイトをして家族を支えた。父はスプリング製造工場で働き、母は凍るような寒さの中、食肉加工会社で梱包作業をしていた。
 少年は、自身が置かれた環境を恥と思ったことはない。自分でお金を稼ぎ、家族を支えることに誇りを感じていた。常に笑顔で、明るく走り回る彼は、路上生活者にも人気者だった。
 そんな純粋で、ひた向きな彼の姿は、小東京で商店を営む日本人男性マサの目に特別な存在として写った。「おじさんの店でアルバイトするかい?」。少年は、学校が終わるとその足でボイルハイツから小東京の商店へ向かった。
 2ベッドルームの家に8人が住む自宅では、宿題をする場所も、時間も、余裕もない。そんな彼の家庭環境を知っていた男性は、時給を支払っている間も宿題をやらせた。当時、「マサ、僕、頭いいんだよ」が少年の口癖だった。
 将来は男性のように商店を持ってお金を稼ぐのが夢という少年に、男性は「本当に頭がいいのなら、普通の人ができないことを目指しなさい」と言った。
 ある日少年は、「高校卒業まで雇ってほしい」と言い出した。ギャングが増え治安が悪化した公立高校から私立のカソリック校へ転入するためで、両親には払えない月80ドルの授業料を稼ぐためだという。男性は約束した。一時商店を閉めなければならなかった時は、男性が少年の授業料を支援した。
 そんな2人の出会いから約30年が過ぎた。少年は高校卒業後、バークレー、プリンストン、UCLAを卒業し、弁護士を経て現在、「普通の人にはできない」職業に就いている。
 少年の名は、小東京を管轄区に含む第14区代表のホゼ・ウイザー市議。
 「市議として小東京を代表できるのは、自分にとって、久しぶりに『故郷』に戻ってきた感じ」
 そう語るウイザー市議の記事は、来年1月1日発行の新年号に掲載します。【中村良子】

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