デジタル・メディアの発展

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 昔、東京郊外で育った少年の頃、『仮面ライダー』を見たかったら、土曜日の夜は友達との遊びを切り上げ、各自7時半までに必ず帰宅しなければならなかった。まだビデオもなく「録画」という概念もない。その放映時間に間に合わず見損なったら、もう二度と見られない、という時代だった。再放送があってもいつになるかわからない。それゆえ、その1回きりの映像に緊張しエキサイトし、茶の間にあるテレビの前を陣取って真剣に見た覚えがある。翌週学校では、その番組の話でクラスメートと盛り上がる、だからこそ見られなかったら仲間と楽しさも共有できなかった。
 時代と共にテクノロジーが進化した現在は、Netflix、Hulu Plus、Amazon PrimeというSVOD(Subscription Video on Demand)が台頭してきた。1作品単価いくらで見るのではなく、月に定額の7ドル99セントを払うとネットでテレビ番組や映画を好きなだけ見られる、というサービスだ。
 従来の3大メジャーネットワークでしか放映されなかったTVシリーズが、放映した翌日(4日後とかも)からはいつでも見られたりする。過去の全エピソードもだ。タブレットでもスマートフォンでも24時間いつでもどこでも視聴可能である。
 有料の会員を集めるため、この3大SVOD会社が、それぞれクオリティーの高いオリジナルの作品を製作し放映する構造が急速に進展している。
 今後ニュース、スポーツ、TV番組、映画が月24ドル(SVOD3社がそれぞれ月額8ドルとしての合計額)で見られるようになると、HBOなどのペイケーブル代を含めると月80ドル(全米平均額)払う高めのケーブルTVも必要なくなる。事実、ここ数年でケーブルTVの解約世帯者数が急増している。やがてはテレビ自体が消えるかもしれない。これは、10年前、携帯電話が普及し、家から固定機が消え始めた状況と似ている。
 めまぐるしく変化する生活様式や社会に対応するため、場所や時間を柔軟に活用できるのは素晴らしいし、確かに便利になった。しかし、子供の頃に感じた仲間たちとの一体感や、限られた時間と場所での緊張感が失われていくような気がする。【長土居政史】

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