硬貨の愛称

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 アメリカに来て初めて買い物をした時に、レジで店員から「ダイムは持っているか?」と聞かれ、大いに戸惑った覚えがある。
 ダイムとは10セントのことだ。1セントをペニー、5セントをニッケル(発音はニコーとかネコゥに聞こえる)、そして25セントをクォーターと呼ぶ。
 ペニーは銅貨(現在は亜鉛で作られて表面は銅メッキ)で、1787年ベンジャミン・フランクリンがイギリスの「ペニー、ペンス(イギリス式の複数形)」から名付けた。リンカーン大統領誕生百周年にあたる1909年以来、彼の横向きのデザインとなり今日に至る。
 問題は、ここ数年、1ペニーを作るのに1.8〜2.5セントのコストがかかってしまっていることだ。ちなみにカナダでは、今年2月ペニーを廃止した。オーストラリア、イスラエル、スウェーデンでも少額硬貨の製造や流通を既に廃止している。
 5セント硬貨はニッケルの合金で製造されたので「ニッケル」が通称となった。昔、小さな映画館は、入場料が5セントだったため「ニッケルオデオン」と呼ばれた。
 ダイムは10分の1という意味で、フランス語のDisme(ディーム)を経て「S」を取り除き、Dime(ダイム)になった。硬貨をよく見ると、「ONE DIME」と書いてある。しかし、その意味を知らないと、一体いくら? と困惑する。
 4分の1の意味を持つ「クォーター」の愛称は容易に納得できる。当初は、中途半端な割合に驚いた。もし日本で「25円玉」が出回ったら、きっと混乱を招くだろう、と想像したからだ。ところが慣れると一番便利である。バスケットやアメフトフットの試合形式も4分割したクォーター・システムだ。クォーター・パウンダーという名のハンバーガーもある。「クォーター」はアメリカの生活にしっかりと根付いているのだ。
 日本の硬貨は、五円玉は漢字の「五」だが、(親切にも?)全てに洋数字がついている。アメリカの硬貨は、そもそも数字が書いてない。
 今では、自ら「ダイムを持ってます」と言えるまでになったが、やがてはカードや電子決算で、硬貨が消え去る時代が来てしまうのかもしれない。【長土居政史】

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