若者の風

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 医学生の義理の甥が来た。25日間の旅の最後にわが家に立ち寄った。
 今回の旅行は日本からニューヨークへ。そこからフィンランドにフィヨルドを見に行く。次は、モナコのニースへ。ニースから突然、キューバへ。なぜキューバかというとへミングウエーが入り浸った酒場を見たかったからとか。
 わが家からは、ワインの生産地ナパへドライブ。映画監督のコッポラのワイナリーに行きたいのだという。コッポラのワインは美味しいと評判だ。
 コッポラ親子は日本びいき。娘のソフィアは、東京に住んだ体験をもとに「Lost in Translation」をつくり、アカデミー賞をとった。甥の旅はとりとめのない旅のようでありながら、はっきりと、ここへ行きたい、あれが見たいと、彼なりの理由があるのがいい。
 彼はラップトップを開けて、これまでに訪れた旅先の写真をFBで見せてくれた。旅の話は尽きない。中でもうらやましく思ったのは、一般人が入れない地域に医療目的で入れたことだ。報道陣さえ入れない中東の紛争地でも、人々は無料の医師団なら迎え入れる。医療に国境はない。黙々と自分たちが出来ることを果たした後に、現地の子供たちとサッカーをする写真も混じっていた。
 インド北部の町にダライラマなど亡命チベット人が多く住む。そこにも年末年始を返上し、白内障の手術を無料でする医師団に同行したそうだ。粗末な設備の中で始める手術に緊張する医師たちの顔が写っていた。取り出された茶色い水晶体が50きれいに並べられた写真。
 手術を2例見た後は執刀医から市内観光をすすめられたという。観光といっても、老人ホームを視察すること。質素だけど清潔だったと言う彼。FBの画面には、術後にはっきり見え始めた目から、涙をこぼす老人たちの、素朴な笑顔が写っていた。
 「いい医者になろう」そう決心している若者。読んだたくさんの本、見た映画、旅先で会った人々、それらの体験を反映させた医療人になってほしい。
 若者は爽やかな風を残して、日本へ帰って行った。また、会いましょう、と言って。【萩野千鶴子】

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