押元さんのモダン着物が5位:世界目指す「飛躍の年に」

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一昨年、ショーを終え観衆から喝采を浴びる押元さん(右端)とモダン着物を来たダンサーとスタッフ

一昨年、ショーを終え観衆から喝采を浴びる押元さん(右端)とモダン着物を来たダンサーとスタッフ

 昨年11月にモスクワで開かれたミス・ユニバース世界大会で、日本代表の松尾幸実さんが身にまとった十二単をモチーフにしたモダン着物が、ナショナル・コスチューム部門で堂々の5位入賞を果たした。衣装は、ハリウッドを拠点に活動するコスチュームデザイナーの押元末子さんが総合監修し、芸術性と技術力の高さを実証した。押元さんは、日本の着物として史上初の入賞という快挙を成し遂げ、自信を付けたものの、大きな目標に向けての一里塚と捉え「今年は芸術的なさまざまなショーを展開して着物の美しさを伝え、飛躍の年にしたい」と世界を目指す。【永田 潤】
ショーに力を注ぎ「飛躍の年にしたい」と、今年の抱負を述べる押元末子さん

ショーに力を注ぎ「飛躍の年にしたい」と、今年の抱負を述べる押元末子さん

 押元さんは、大会の模様を自宅でテレビ中継を見ていた。「世界の晴れ舞台で勝たせてあげたい」と、本番に備えて指導した松尾さんは、惜しくも予選敗退となった。落胆していたが、突然「JAPAN」とアナウンスされて驚いた。何が起こったのかしばらく分からなかったが、ナショナル・コスチューム部門で86カ国中、自身の作品が5位に入ったのだ。押元さんはそれまで、ハリウッド映画を中心に衣装を提供してきた。米国外では、このミス・ユニバース・ジャパンの公式コスチュームに選ばれたのが初めてで、着物を「逆輸入」する形となり世界デビューした。しかも大きな大会で、いきなり好成績を収め、今後の活動に弾みを付けた。
 各国代表の民族衣装を見て、世界を舞台に戦う上での方向性を再確認できたことが、一番の収穫だという。「華やかで、品があり、日本の伝統的な着物とは違う。ステージで審査員と観衆を魅了させるコスチュームだった」とあらためて、思い知った。4位から優勝までの入賞作品については「伝統にとらわれず、その国々の文化、アイデンティティーを巧みに表現している」と認め「やはり人目を引くためにデザインされていて、あんな風にゴージャスに仕上げなければ勝てない」と話す。
 押元さんが今回提供したのは、十二単をモチーフに鶴と松の木をデザイン。約600個のクリスタルをあしらい、伝統とモダンを調和させた着物だった。日本の伝統美を基調とするものの奇抜なデザインは伝統の着物とは、かなりの差異がある。その理由を「外国の人と、(伝統を重んじる)日本人の感覚は違う。この大きなズレがあるので、モダンに仕上げなければ分かってもらえないから」と説明する。
昨年6月にファッション誌「ボーグイタリア」に紹介された押元さんのモダン着物

昨年6月にファッション誌「ボーグイタリア」に紹介された押元さんのモダン着物

 押元さんはここ数年、ロサンゼルスで行われるビューティー・コンテストの日本人参加者の依頼で、コスチュームデザインと製作を行ってきた。担当した当初は、伝統的なデザインで着付けをしていたが、並の評価しか得られず入賞にほど遠かった。この教訓から「世界の審査に合わせるためにグローバルなデザインにしなければならない」と、「モダン着物」へと舵を切った。映画や舞台衣装で培った要素を取り入れた途端、審査員の見る目はがらりと変わり、好成績を納めるようになったという。これらのアートセンスとテクニックの高さが評価され、ミス・ユニバース・ジャパンのナショナル・コスチューム・デザイナーに採用され、世界へ挑む扉を開けた。

着物の伝統美を尊重し普及
世界で勝つには「モダン」

 山野流着装の伝統的な着物の着付けで、基本を忠実に教える一方で、モダン着物の最新スタイルを考案する押元さん。「末広着物エージェンシー」を経営し、ハリウッドで舞台に映画、テレビ、コマーシャル、雑誌、各種イベント(アカデミー賞、グラミー賞の授賞式など)に出演する俳優、女優が着る衣装、主に着物のデザインを行う。着物をドレス風に表現したりし、ファッション性を高め、ダンサーやバレリーナがステージで着用する着物コスチュームを創造し、注目を集めている。
 「世界で勝つためには『モダン(着物)』でなければならない」と力説する。その半面、他のモダン着物の多くが「崩しているだけで、形になっていない」と指摘。「モダンは、伝統の着付けの基礎がなければ、芸術的なコスチューム

長い袖をリボンで絞り、中振袖を着たバレエダンサーのジャンプ

長い袖をリボンで絞り、中振袖を着たバレエダンサーのジャンプ

にはならない」と言い切る。また、モダンスタイルと称した盗作も多く、嘆くばかり。
 他方、伝統の着付けでは、約40人の弟子を抱え、稽古を付けては「ただ着せるのではなくて、着る人の年齢に合わせ個性を引き出す着付けを心掛けるように」などと指導。日々の修業で習得した技術に支えられた着付けは「何十、何百通りもある。それらの組み合わせを、着せる人に合わせてどのようにアレンジするかが、着付け師の仕事。そこがまたプロの腕の見せ所でもある」と、奥深さを強調する。
 「日本の着物は、すばらしい。日本文化の美しさを世界の人々に知ってもらいたい」と普及に意欲を示す。着物の伝統美を尊重しつつ、モダンを追求し、世界に目をむけた今年は着物のショーに力を注ぐと意気込む。ミス・ユニバースで上位4位の作品について「自分の作品が負けたとは思っていないが、上位はどれも目立っていた」と分析。審査員にアピールするためには、派手なデザインにする必要があると認識するものの「日本の伝統美を失わずに、和の品格だけは、落としてはならない」とし、「伝統とモダン、どちらも日々、学ばないといけない」と、両面の精進を忘れはしない。
訪問着本来の形を残した着付け。ミュージカル風の美しいダンスのスピンで、モダン着物がいっそう映えた

訪問着本来の形を残した着付け。ミュージカル風の美しいダンスのスピンで、モダン着物がいっそう映えた

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