五 月

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 今まで日本には春夏秋冬を問わず何度も里帰りをした。親兄弟と会い旧友と再会し、仕事や用事も済ませ、折角日本まで行くのだからと毎回あちこち国内旅行もする。
 振り返ると、行った季節は5月と10月が割と多い。爽やかな気候で気分の良い時期が自ずと多くなる。
 いよいよ5月。この月はまず木々の緑と青い空、爽かな風のイメージだ。5月の日本でこの目で見て実感した言葉を並べてみた。
 風薫る五月、新緑、新茶、蕎麦がき、笹団子、草もち、初がつお。
 (飛騨高山にて)日本の屋根、緑の山に囲まれた城下まち、情緒の温泉、澄んだ水、水芭蕉、飛騨牛のほう葉味噌焼き、五平餅、とろりとコクのある市販しないどぶろく。五平もちは吟醸酒を造る時に削った米で作る。秋田のきりたんぽの串焼きとはしょう油と味噌の味付けの違いはあるが、焼きたてのお焦げのうまさと歯ごたえが似ている。
 (白川郷で)世界遺産登録の合掌造り集落、5階層の大きく独特な内部構造は建築に興味ある人なら必見だ。サイズも巨大で、ある家の屋根の葺き替えには一時に屋根上に300人もの人間が登った写真が絵はがきになっている。
 (八ヶ岳で)高原の空気と水温10度の豊かな湧き水、白樺、南アルプスの景観、うら富士、しゃくなげ、おおてまり、山吹、つつじ、さつき、山桜、プリムラ、パンジー、ライラック、チューリップ、キャッツミント、ローズタイム(これらは一つ一つ見てメモにとどめた)、緑の中に鳴くうぐいす、カッコー、共に托卵をする鳥。甲州名物ホウトウかぼちゃ味噌うどん。
 始めに触れた初鰹といえば「目に青葉山ほととぎす初がつお」…江戸時代初期の句だ。見事な季節感の感性と描写で風情が目に浮かぶ。
 同じ江戸時代の川柳で「女房を質に置いても初がつお」もある。この時代に限らず江戸時代より遥か大昔から日本人の食文化にはかなりの凝り方があったし、また江戸の人たちも初鰹に相当フィーバーしていた様子が想像できる。鰹は実際は春夏の初がつおよりも盛夏や秋の戻りがつおの方が脂も乗ってうまいと言われるが、それはそれとしてやはり初物を珍重して喜ぶ江戸っ子の心が初がつお騒ぎを作ったのであろう。【半田俊夫】

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