前回の当コラムで私が左眼にうけた白内障手術について書いた。おかげで視界がぼやけていた左眼がほぼ正常に戻った。
 手術前は両眼を開いていても実際は右眼だけでモノを見ている状態で、左眼は薄いベールか霧に覆われた感じで、なにかバランス感に欠けたものだった。ヒトはなぜ眼を2つ持っているのか、という疑問に対し、答えとしてよく聞かれることは、遠近感や立体感の感知のためというものがある。それは左眼と右眼で見た画像を脳が統合してひとつの像としてとらえ、その際、左右のずれを脳が認識し、奥行きを感じているのだそうだ。眼が2つあるために、遠くの物と近くの物を区別して立体的に見ることが出来るわけだ。
 片側(私の場合は左眼)が白内障であったとき、パソコンの画面に向っていても、画面の文章は当然のことながら読めるが、脳裏をモヤモヤしたものが漂い、集中力に支障が生ずるのを実感した。そしてそんな状況で得る情報からの発想がなぜか否定的、ネガティブな発想になっていることに気付かされた。
 この場合、右眼がとらえたパソコン画面の認識だけが脳に伝わり、左眼からの情報はぼやけているため脳には十分に伝わらず、そこで、脳は左右を統合した認識を得られず、バランスの悪い情報としてネガティブに認識してしまったのではないかと思う。左右の眼からの画像認識は単なる画像の統合・認識だけでなく、情報の中身についても左右で異なった処理をしているとしか考えられないものだった。
 脳科学の領域で、左脳・右脳の違いが話題になったりするが、眼も左眼・右眼には別々の機能があり、どちら側の眼でより強く認識するかで対象のとらえ方が異なることになるなんてことがあるのではないだろうか。
 私は手術により左眼の視界から薄幕がとれて対象をクリアにとらえることができ、再びバランスよい視力を得ることによって、私の脳はまた以前のようなポジティブ発想に戻った感じだ。白内障を患い、手術までしたおかげで、これまで思いもよらなかった左眼・右眼とその統合について考えさせられた。
【河合将介】

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