「また誰か殺された」「あ、また、学校で襲撃事件か」。私の反応はもうそれくらい。狭いエリアでいろいろ起こる。
 私が通う南カリフォルニア大学(USC)の近くで、最近、中国人学生が未成年を含む4人に殴られて殺された。私と同じ留学生であり大学院生。事件現場は私が1カ月前まで住んでいた家の目と鼻の先だ。
 2年前には中国人学生2人が銃で撃たれて亡くなった。これも学校の近く。その半年後のハロウィーンでは、キャンパス内で発砲事件。今年に入ってからは大学のゲートでまたまた発砲事件。それ以外でも、大学のDepartment of Public Safetyからは犯罪警告のメールがちょくちょくと届く。これがここの現実。
 日本のニュース現場で事件、事故、自然災害などいろいろと目の当たりにしてきた私でも、大学周辺で身近に起きる出来事や、何気なく目に入る日常の景色はあまりに極端に映る。
 USCの周辺は治安が良くないことで知られているが、一歩学校に足を踏み入れると別世界だ。きれいなキャンパス、学生食堂、あちこちにある噴水や花壇、美術館のような図書館。学生が乗っている車はレクサス、ベンツ、BMWにポルシェ。親が会社の社長だったり、政治家だったり、どっかの国の王子だったり。みんながみんなそうではないが、ちょっとびっくりするようなこともここでは特別ではない。
 一歩キャンパスを出ると、また違う世界が広がる。ホームレスの人たちにもよく出会うし、学校から数ブロック離れるとヒスパニックの人たちが多く住む地域になり、街の雰囲気も変わる。
 USCの周辺は、あたかもアメリカの縮図のように見える。狭い地域に極端に所得の高い人と低い人が一緒にいて、移民問題もホームレス問題もある。銃撃事件も当たり前に起こる。私が大学院で専攻する公共政策が今後どれだけ社会の役に立つのだろうか。
 もうすぐ、秋学期がはじまる。夜の9時半に終わる移民政策のクラスの後、どうやってダウンタウン方面の家に帰ろう。USCでは珍しく車を買えない、超貧乏学生である私の目下の悩みだ。【中西奈緒】

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