トラベリング・ナース

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 先日、ラグビーの試合でけがをして、UCLAの病院にお世話になった。担当した看護師の一人であるVさんの働きぶりが印象に残る。夜中の勤務で、根気のいる大変な職業だ。自分の母親も看護師だったので、このように動き回って患者を労っていたのだろうと想像した。
 Vさんは、20代半ばの若い割にはベテランらしく、あらゆる最新装置を問題なく操作し、必要な書類を即座に記入し、てきぱきと業務をこなす。注射も慣れた手つきで、安心する。
 フロア一面にはカーテンで仕切られ、各移動式ベッドに患者が横たわる。Vさんは笑顔を絶やさず、どの患者に対してもフレンドリーな口調で丁寧に応対する。他の看護師や医療スタッフたちとも普段通りに会話しているようだ。
 てっきりここの病院に長年勤務していると思ったが、「私はテキサス出身で、2週間前サンフランシスコからここに来たのよ。トラベリング・ナースなの」と言う。聞き慣れない言葉だ。彼女は説明してくれた。
 看護師の免許を取得し経験を積んで、斡旋するエージェンシーに登録し、希望の土地へ、決められた期間勤務(4~13週間)する。彼女の場合は5週間周期で、これまで4年間にイタリア、南アフリカ、カンボジアなどの病院で勤務したという。
 「トラベリング・ナース」は病院の看護師不足を補うために、一時的に外部から雇用するシステムだ。元々特派員を目指したVさんは、知らない土地を訪ねていろいろな人たちと出会えるし、とても楽しいという。看護師の需要と供給を解決するし、旅行好きな看護師にとっても一石二鳥の合理的な仕組みだ。
 冗談ぽく「まるで青年海外協力隊のボランティアみたいですね」と言うと、「でも給料がいいのよ」と答える。時給75ドルらしい。住宅手当も出てウエストLAのアパートに週100ドルの格安で生活できる。
 「家族や友達は恋しくないのですか?」と聞くと、「若いうちは、いろんな世界を見たいの」と答える。しっかり貯金もして、やがては結婚して子供を産んで落ち着くまで、このような生活を続けたい意向だ。
 目標を持って一生懸命仕事をするVさんは、病院で一番輝いていた。患者たちの病気やけがも早く回復しそうな気がする。【長土居政史】

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