ビジネスワイド:抱き続けた復活への道

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先端技術を追求したボーイング787–8型機

先端技術を追求したボーイング787–8型機(JAL提供)


JALロサンゼルス支店長
栗原宏和さん

 新しい機材ボーイング787–8でロサンゼルス国際空港(LAX)と関西空港の運航が決まった日本航空(JAL)。3月20日に同区間8年半ぶりとなる復活便が就航されることにより、今後さらなる訪日客の増加にも期待がかかる。同社ロサンゼルス支店長に昨年7月に着任した栗原宏和さんに就航に向けての思い、そして2010年の倒産以来、心の内に抱き続けた復活への思いを語ってもらった。【取材=吉田純子】


新たな就航便の魅力
大阪周辺の観光にも便利

 186席のコンパクトな機内。機材自体が新しい技術を取り入れ、カーボンファンバーで出来た機材は、客室内にかけられる圧力が通常の飛行機より強く、より平地に近い状態を保つことができる。「従来以上に快適さにこだわりました。約12時間半ほどのフライトですが、お客さまにはリラックスして過ごしていただきたいと思っています」
 LA大阪間は8年半ぶりの運航となる。直行便であるため、ビジネスや観光の利用客にも便利。大阪は東京につぐ第2の都市であり、近郊には観光名所がたくさんある。京都や奈良、少し足を伸ばせば四国や名古屋にも行くことができる。
 20年の東京オリンピック開催に向け、観光での需要拡大が見込まれ、東京だけでなく、大阪周辺を訪れる観光客の増加に期待がかかる。

倒産からの道のり
「人間力」を信じて

JALロサンゼルス支店長の栗原宏和さん。後方に見えるのは10年に倒産した際、再建に向けてのエールを込め、当地の日系企業各社から送られたという千羽鶴。今も支店に大切に飾られてある

JALロサンゼルス支店長の栗原宏和さん。後方に見えるのは10年に倒産した際、再建に向けてのエールを込め、当地の日系企業各社から送られたという千羽鶴。今も支店に大切に飾られてある

 「10年に当社は倒産しました。その後、国民の皆さまからの支援のおかげで再建の道を歩ませていただいています。今まさに再建途上。これから利便性を増やし、恩返しをしていくことが社員一同の目標となっています」
 同社は10年1月19日、会社更生法の適用を申請し、経営破綻した。その後、京セラ創業者の稲盛和夫氏が代表取締役会長に就任。翌月から建て直しが始まった。
 稲盛氏が徹底的にこだわったのは「JALフィロソフィー」の再構築。事業再生以外にも社員の「心」を変えるべく、仕事をする上での考え方、心持ちを全社員に厳しく指導した。
 パイロットや整備、地上職員などさまざまな職種が集まる業態であるがゆえ、社員一同が心をひとつにして取り組むことは他の業種に比べ難しかったという。しかし、全職種が「JALフィロソフィー」をもとに意識統一を図り、考え方をひとつにしたことで風向きが変わった。
 現在、同社では教育の一環として年4回、全社員が業務上の経験談や意見を交換する勉強会が実施されている。日本だけでなく世界各国の支店でも同様に実施されている。
 「結局のところ『人間力』が一番大事だったのです。空港であればカウンター職員、機内であれば客室乗務員がいかにお客さまに良いサービスを提供できるか。倒産して気づくのは遅いと言われるかもしれませんが、『仕事に対する考え方』を変えることが一番重要だったのです」
 稲森氏の「JALフィロソフィー」による企業再建で、破綻から2年後、同社は過去最高の営業利益を出すまでに再生した。

入社以来、変わらぬ思い
求めるのは日本らしさ

 北九州生まれの九州男児。家の側に飛行場があり、小さい頃から飛行機を見るのが好きだった。
 入社以来、変わらずに思い続けているのが、搭乗客に喜んでもらうため、社員一同がともに動くことの楽しさ。
 空港で搭乗客を出迎え、ゲートで客室乗務員が引き継ぐ。ゲートが閉まると滑走路近くまで降りていき、飛行機に向かって手を振る。「こちらから操縦室の様子は暗くて見えませんが、パイロットの白い手袋がこちらに向かって手を振ってくれているのは分かるのです。そんな時、この仕事をしていてよかったなと思います」
 社員から社員へと搭乗客を引き継ぎ、最後に揺れる白い手袋を見ると、安全快適に届けるため、社員一同の心がひとつになっていると認識できるのだという。
 「一度倒産した会社を再生させていただいた感謝の気持ちを決して忘れないこと。謙虚な気持ちを忘れずにお客さまと接することが、満足度の向上につながると信じています」
 日本航空が求めるのは日本らしいサービスの提供。世界中どの空港にいてもチェックインカウンターから「日本」を感じてもらわなくてはならない。「日本らしい」と思ってもらえるサービスこそが「おもてなしの心」に直結し、他社との差別化にもつながると栗原さんは話す。「パイロット、地上職員、整備、客室乗務員といった社員一同がベクトルをひとつにして、倒産したがゆえの心のバネを生かしていきたいと思っています」
 倒産後、同社は以前に比べ関西空港発着の便は少なくなっているが、今後需要の動向を見ながら、利便性の向上に努めていくという。

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