フランス料理と納豆

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 「和食がユネスコ無形文化遺産に登録された今、納豆を世界に広める絶好のチャンスです」―と意欲を燃やしている人がいる。茨城県常陸大田市の納豆メーカー社長の永田由紀夫さんだ。(毎日新聞2月6日付)
 熱いご飯にかけて食べる納豆のネバネバ、ヌラヌラ感はなんともいえない。納豆に含まれているナットウキナーゼやアンギオテンシンといった酵素が血栓を溶解したり、血圧降下に役立つという科学的根拠を突きつけられれば、より有り難さが増すというものだ。
 もっとも日本人皆がみな納豆好きなわけではない。都道府県別一人当たりの納豆消費量は東北、関東が圧倒的に多い。今では納豆を食べない都道府県はゼロだが、元々関西以南では納豆は食べなかった。
 東京農業大学の小泉武夫教授によれば、その理由は東北などに比べて西日本、九州は一年中温暖な気候風土、食品が腐敗することに対し警戒心があり、納豆のような発酵食品には本能的に手を出さなかったからではないか、という。(「納豆の快楽」講談社文庫)
 中国人の友人によると、中国にも「豆鼓」(ドウツー)と呼ばれる「納豆」があるらしい。だが中国ではこれを油で揚げ、副食として食べるようだ。ネバネバとは無縁だ。今や北米でも納豆は手軽に手に入るが、「お買いいただくのは在留邦人の方がほとんど」(LA近郊の日本食料品店マネジャー)。米国生まれのうちの家内や娘は見向きもしない。
 その納豆をコーケイジャン相手に売り込もうという永田さん。背景には日本人のコメ離れに伴う納豆の国内消費の減少がある。
 永田さんは、1月24日から5日間、仏リヨンで開かれた「シラ国際外食産業見本市」に粘りを抑えた自社商品「豆乃香」を出品。バターに練り込んだり、南仏の伝統的な豆料理「カスレ」に使ったりしたところ、粋なフランス人シェフたちからは「コーヒーのように香ばしい」「豆の味がしっかりしている」と好評だったらしい。
 「辛皮(からかわ)の猫にあらねば三味線の糸をも引かぬ浜名納豆」 (蜀山人)
 ネバネバしない納豆クン。ヘンシンして世界に羽ばたけるか、どうか。【高濱 賛】

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