一部屋に集まる

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 仕事柄、たくさんの家を見ている。われわれの生活の変化は、家の内装や間取りに微妙に反映して、興味深い。
 15年くらい前まではまだ、濃い緑やサーモンピンク色の絨毯に、壁紙オンパレードの家が結構あった。昔のテレビのホームドラマに出てくる内装である。豊かでフェミニンな色使い。いかにもホームスイートホームの雰囲気である。
 4寝室の家でも、トイレは一つということもあったし、主浴室はシャワーのみが本道だった。天井に照明がついているのは、ダイニングテーブルの上だけ、と決まってもいた。照明のない各部屋はランプをつける。日本から来た人は、これらに一様に驚いたものだ。
 窓は小さく、室内は暗い。その上、外は晴天でも日中はカーテンをしめ、暗い部屋にランプをつけて過ごす。立派な家具が日焼けしないよう、直射日光を避けたのだろう。
 ところが今は誰もが明るい家を求めるようになった。寝室は小さくなり、反対に浴室や台所が広くて豪華絢爛になった。3寝室の家なら、浴室は2個以上ある。浴室が数個あるのは贅沢な話だが、この数に慣れてくると、一つでは困るのが現代のわれわれである。
 小さかったクローゼット。今は大きなウォークインクローゼットがなければ女性は振り向かない。大抵の家はそこは洋服で埋まっている。
 以前は居間も家族室も台所も別々にあることが家を求める際の必須条件だった。最近は壁が取り払われたオープンキッチンが必須。台所に立つ母親の目が子供に行き届くからである。
 しかし、最新式のモデルハウスを見て驚いた。なんと居間も家族室も台所も、全ての壁を取り払い、一つの巨大なスペースにしているのだ。ここまでオープンにするとは。一つの大きな空間で、子供は宿題をし、遊び、母は台所で食事の用意、父は仕事のかたずけ。一緒に暮す家族の姿がお互いに全部見えるようになっている。
 家が小さかった昔はそれしかなかった。豊かになった今、その形に逆戻りし始めたのだろうか。一部屋に家族全員が集まる。その良さが再認識され始めたのなら、嬉しい。【萩野千鶴子】

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