鈴木大拙とブギウギ

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 ♪♪「東京ブギウギ リズム ウキウキ ココロ ズキズキ ワクワク…」
 子供の頃、ラジオから流れていた笠置シズ子の歌声が今も耳元に残っている。1947年日劇のショーで歌われたのがきっかけで大ヒット、並木路子の「リンゴの唄」と並んで戦争直後の日本を象徴する曲だ。
 ジャズ通の友人によると、ブギウギは20年代、シカゴの黒人街で盛んに演奏され、30年代後半、スイング・ジャズ時代の主役となった。終戦と同時に駐留軍経由で日本に入ってきた。「ジャズのベース・リズムを繰り返しながらブルースのバリエーションを奏でる」らしい。
 「東京ブギウギ」を作曲したのは服部良一。作詞は鈴木アレン勝という、一般にはあまり知られていない作詞家だ。歌手、池真理子の夫だったこともある。
 実は、このアレン勝氏、白人と日本人女性との間に生まれた混血児で、世界に名だたる宗教哲学者、鈴木大拙師の養子として厳しく育てられた。が、それが裏目に出て、手に負えぬ不良少年になってしまった。壮年になって女性自殺事件絡みで週刊誌ダネとなり、鈴木師の名声が傷つくと考えた親族や弟子たちはこの「息子」の存在すら隠そうとした。
 そのアレン勝氏と師との父子関係を抉(えぐ)り出した「東京ブギウギと鈴木大拙」(山田奨治著、人文書院)が最近出た。
 圧巻はこれまで門外不出だった師の日記やアメリカ人の夫人と交わしていた英文書簡。朝から晩まで机に向かっている養父を「骨董品的存在」と断定する息子は、その風貌から女性たちにモテモテ。やがて極度のアル中となり、結婚離婚を繰り返す。師はその息子を事実上「勘当」する。だが、最後の最後まで愛おしくてしかたなかった。得意の英語で日本の禅を世界に普及させた師が見せた「もう一つの素顔」。それは一人の父親の顔だった。
 ♪♪「ブギを踊れば 世界は一つ。おなじリズムと メロディーよ…世界の歌 楽しい歌 東京ブギウギ」
 「この世には過去も未来もない。あるのは今現在、この瞬間だけだ」と説いた師。「不肖の息子」はそのことをブギの中で悟っていたのだろうか。【高濱 賛】

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