ケンタッキー在住の娘の出産手伝いに行って、一番印象に残った家事は、空き箱の片づけだ。
 出産を祝うプレゼントが、各地の友人から届く。出産後で外出もままならない娘もまた、必要なものをインターネットで次々に注文し、これが届く。まずUSPSによって手紙や小包が配達され、夕方にUPS、その少し後にFedExによって荷物が届く、という毎日だ。
 ネットショッピングで届く荷物は、時には箱の傷んだものもあるが、大概は厚い段ボールでがっしりと守られている。余り小さくては紛失するからか、菓子箱サイズの箱を開けるとCDが一枚だけということも。家に居ながら買物出来るのは便利だが、配送用に消費されるガソリンと紙箱は膨大なものだろうと、箱をつぶしながら思ったことだ。
 そのオンラインストアの最大手はアマゾンだ。
 アマゾンが、書籍のオンライン通信販売会社として、私の住むシアトルに誕生したのは1990年代の半ば。97年には株式が上場されて身近な話題となった。そのうちに、市内ビーコンヒルにそびえる病院跡をリースして本社を置くと、「あれがアマゾン社か」と見上げたものだ。やがてアマゾンは丘を降り、市内ユニオン湖の南に本社を建設。創業から約20年の今では、アマゾン社オフィスは活気あふれる同地区に多くの区画を占め、オンライン通販の急激な成長をまざまざと見ることが出来る。
 先ごろ、娘の友人で、今は東京で活躍するキャリア女性が結婚した。私の日本滞在中にちょっとした祝いを届けたいと、娘と相談。結局、毎日の激務と結婚生活の両立で超多忙と聞くと彼女には、オンライン通販のプリペイド・カードを購入し、結婚祝いのカードに同封した。
 「鯉のぼりを、一匹だけ欲しい」という娘の、季節外れの奇妙なリクエストにも、オンラインストアはなんなく応える。ネットなら安いし、近隣に無い物も容易に手に入るしね、と息子。オンライン通販の利用は、今後も増え続けるだろう。空き箱の山をますます増やしながら。【楠瀬明子】

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