「シカゴの母」のお墓参り

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 シカゴの中西部仏教会は、戦時収容所を出た河野行道師により1944年開山された。
 お寺の運営資金を捻出するために、一世メンバーが知恵を出し合ってスタートしたカルチャー・フェスティバルが「銀座ホリデー」と呼ばれる夏祭りで、日系人だけでなく広くコミュニティーの人々が毎年このお祭りを楽しみにしている。
 1983年に、このお祭りに12人の江戸伝統工芸の技グループが日本から招かれ大変人気を呼んだ。
 市松人形、江戸独楽、江戸風鈴、まめ凧、つまみ細工、染め絵手拭、陶芸、手相などの運命鑑定、書道、印鑑や飴細工、日本刺繍など、初年から後は毎年4人の職人さんが交代でこの催しに参加、地元の人々に日本の伝統工芸の粋を紹介し続けた。
 年を経て、最初に銀座ホリデーを訪れた職人さんに白髪が見られるようになり、数年前からはこのグループにも世代交代が現れた。
 父親の跡を継いだ息子さんであったり、師匠の跡を受けたお弟子さんなど、若い人々が伝統の技を受け継いでいくのを目の前に見て喜ばしく思うと同時に、最初を知る者には、何か寂しい思いも…。
 ところが今年は市松人形の藤村さん、手拭の川上さん、陶芸の木下さん、木彫りの横谷さんと、昔懐かしいメンバーが顔を揃えた。
 ブースに懐かしい藤村さんを見かけて思わず「お帰りなさい」と声をかけ、そのまま30年前にタイムスリップ。
「僕たちここしばらく若手に銀座ホリデーを譲ってきたのですが、今年はシカゴのお母さんのお墓参りにきました」
 33年前、初めてシカゴを訪れた彼らを温かく迎えた仏教会メンバーの中でも、ホームステイをさせたり食事の世話など、毎年母親代わりになって職人さんたちの面倒を見てきた二世の山本アリスさんが昨年暮れに他界したが、その訃報を受けた4人が、墓参のために予定より1日早くシカゴを訪れたのだという。
 親身になって技グループの世話をした「シカゴの母」にお礼を述べに来た日本の律儀な息子たちを迎えた、アリスさんの嬉しそうな笑顔が見えるような気がする。【川口加代子】

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