ゴツゴツとした岩肌と乾ききった大地は、かつて咲き誇った花々を思い懐かしむように、ただ灼熱の太陽の恵みだけを吸収しているかのように見えた。5年におよぶ干ばつでカリフォルニア州ではもはや、あたり一面を覆い尽くす美しい花々をみることは不可能かと思われていた。
 深刻な干ばつ被害に直面していた加州では、水不足からダムは干上がり、底はあちこちでひび割れるほどまでになっていた。しかし今冬、加州全域を襲った大雨の影響で干ばつは解消され、節水制限などを強いられていた州民からは「恵みの雨」と喜びの声があがった。
 一方で、北加にあるオロビルダムでは、降り続いた大雨によりダムが決壊の危機に直面。周辺住民およそ20万人に避難命令が出されるまでの事態となった。一難去ってまた一難。加州には次から次へと問題が巻き起こる。
 そんな中、日に焼けた薄茶色の大地に、淡黄やオレンジ、ピンク、紫色の花々が姿を見せた。干ばつが解消されたおかげで、州内各地で野生の花々が咲き始めたのだ。
 サンディエゴ郡北東にあるアンザ・ボレゴ砂漠州立公園は加州最大の砂漠として知られる。今年は大雨の影響で例年より花が多く咲き、乾ききった砂漠にまるでオアシスが広がったかのように、訪れる人々の心を潤している。これは10年に一度起こると言われるスーパーブルームという現象で、ほかにもアンテロープバレーなど加州のいたるところで州花「カリフォルニアポピー」が美しく咲き誇っている。
 カリフォルニアポピーの花言葉は「希望」。ようやく干ばつが解消されたカリフォルニアの大地に、まるで希望を届けるかのように美しい花があたり一面を覆う。その様子は全米ニューでも取り上げられ、話題となっている。
 かつてカリフォルニアの地に足を踏み入れたスペインの探検家たちは、黄色やオレンジ色の花々が大地を覆い尽くし、太陽の光を浴びて美しく輝いている光景を目にし、カリフォルニアを「黄金の西部」と呼んだ。
 恵みの雨がもたらしたスーパーブルームは、加州を再び黄金の西部に甦らせてくれたかのような、そんな春のひと時を演出してくれたように思う。【吉田純子】

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