少年よ、大志はどこへ

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 「少年よ、大志を抱け」。1877年、札幌農学校(現在の北海道大学)の初代教頭のウィリアム・スミス・クラーク博士は日本を去る際、この言葉を学生たちに残し米国に戻ったという。
 夢は大きく。夢や憧れは大きければ大きいほど、人生にワクワク感をもたらしてくれる、そう思っていた。しかし近年、小中学生に将来なりたい職業を聞くと「会社員」という答えが返ってくるようだ。
 日本の人材サービス会社が全国の小中学生1千人を対象に「将来就きたい仕事」に関するアンケート調査を行ったところ、2017年の憧れの職業は昨年に引き続き会社員が男女総合でダントツの1位となった。
 筆者が子どもの頃、クラスメイトたちはこぞって「スポーツ選手になりたい!」「歌手になりたい!」など、実際にはちょっと困難そうな夢でもお構いなしに憧れの職業を言い合っていたものだ。
 しかしクラーク博士の言葉から140年後の今、彼の言葉は無惨にも、現代の日本のこどもたちの魂には反映されていないようにみえる。大志を抱くより、経済的安定が最優先事項なのだろうか。夢というより将来を現段階からきわめて冷静に捉えているように思える。もちろん会社員がいけないといっているのではない。ただ小中学生の回答としてはあまりにも現実的だったので驚いてしまったのだ。
 日系人初の宇宙飛行士で1986年のスペースシャトル「チャレンジャー」の爆発事故で亡くなったエリソン・オニズカ氏は、宇宙に飛び立つ前、父方の先祖の故郷福岡県うきは市に墓参りに訪れたという。その際、同市の中学校で講演したオニズカ氏は生徒たちに向かってこう話したという。「みんな夢を持とう。夢に向かって努力しよう。夢はきっと叶えられる」
 人の可能性は無限大。せめて子どもの時くらい大きな夢を持っていいと思う。たとえ夢が大き過ぎて、その後儚(はかな)く消え去ってしまったとしても、その時その時抱いた夢も人生の一部なのだから。
 クラーク博士やオニズカ氏は今、どんな思いで日本の若者を見ているのだろう。「少年よ、大志はどこへ」。この言葉を問いかけているかもしれない。【吉田純子】

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