「ほかに住むところない」…日系住人の声

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24年前から暮らしている東京都出身のアーティスト、愛子ベイドゥンさん。スタジオ兼居住スペースとして活用し、部屋にはたくさんの美術機材が置かれている

 東京都出身のアーティストで24年前から810 Traction Avenueの建物に住む愛子ベイドゥンさんは、「アートディストリクトなのにアーティストが追い出されるなんて」と落胆の色を隠せない。【吉田純子、写真も】

 愛子さんは武蔵野美術大学を卒業後、LAにある美術大学オーティス・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインで美術学修士(MFA)を取得。同じくアーティストの夫スタンさんとともにキッチンとバスルーム、スタジオがある2600平方フィートの部屋を借りている。
 愛子さんの場合、美術機材や作品が置ける広いスペース、さらにインクなどを使用するため特別な許可がいる住居でないと住めないという。「機材を動かすにも費用がかかります。同じ状態で住めるところはほとんど皆無、もしくは3、4倍の家賃を払わなければなりません。夫は一応パサデナ・シティ・カレッジで美術を教えていますが、その給料ではとても払える額ではありません。急に引っ越せと言われてもほかに住むところなどないのです」と話す。
 5月初旬に売却が決まり、6月には立ち退きの通知が届いたという。「多くの住人がプロのアーティストで60歳以上の高齢者。作品もたくさんあり明日出て行けと言われても無理です。8月31日には空き部屋にするようにとのことでしたが、9月1日になってもいられる限り居続けたいと思います」と話す。
 15年以上この建物に住む福岡県出身の鎌田弘通さんは「ここは大学の寮みたい。アパートというよりアートが好きな人が住むコミュニティーのようなものなのです」と魅力を話す。
 「今LAの住宅はとても高く財政的にも精神的にも大変です。ほとんどの住人は仕事場と居住スペース、作品の倉庫も兼ねて住んでいます。用途に合わせてそれぞれ部屋を借りるのが大変だからここに住んでいるのです」と住人の状況を語る。
 「最初の立ち退き通知から3カ月以内に出ていけば引っ越し費用として3千ドルをたて替えるという条件でしたが、トラックを借りて美術機材を運ぶだけでも3千ドルはすぐに超えてしまいます」と話す。今後について尋ねるとこう返って来た。「9月1日になってもここにいます。道端に放り出されても闘うしかないと思っています」
 これまでのところすでに1世帯が立ち退きに合意し引っ越したという。しかし、住人の多くが立ち退きに反対。現在、日系弁護士のフレッド・ナカムラ氏とミーティングを重ね対応をしている。

15年以上この建物に住む福岡県出身の鎌田弘通さん

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