住めば都

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 日本人は繊細な情緒を持つ民族で、日本語はその情緒を自由自在に表現できる言語だから、俳句や短歌が盛んなのだろう。その文化的背景があるから、ことネーミングなども、実にピッタリの表現がある。まさに、その通り、よく言ってくれた、と膝を叩きたくなる言葉が多々ある。住めば都、という言葉もそうだ。
 40年に及ぶ米国生活で、ラスベガス、パームスプリングス、LAと住み移ったが、どこに行っても、いつもこの言葉を思い出した。どの土地も、そこで骨を埋めてもいいと思うほど、気に入っていた。ベガスは、しばしばあれほど暑いところによく住めましたねと言われたが、あんなにいいところはない。仕事は24時間のシフトで選べるし、保険はあるし、税金はないし、休日はチャールストン山でスキーをするか、ミード湖でボート遊びができた。しっかり働き、そのまま貯金した。たまの休日は、山や湖の壮大な自然の中で過ごす米国生活を十二分に味わった。
 次に移ったパームスプリングスは住人がのんびりして、親切で、夕方紫に染まる山の美しさは格別だった。あんなに穏やかで、のびのびした生活が楽しめるところはない。そして、ここLAの温暖な気候は天国だ。これほどたくさんの柔らかな花が咲き乱れるのを他のどの都市で味わえるだろう。疲労困憊していても、花々を見れば体と心の疲労が癒される。
 最近、ニューヨークに住む友人から便りがあり、全てが凍りつく寒さだという。だが、閉じ込められる長い冬だからこそ、音楽会や観劇の高い文化が楽しめる。ネブラスカのオマハに住む知人からの便りには、こんな街、知っている人はいないでしょうね、と書かれていた。とんでもない。投資の神様、ウオーレン・バフェットの本拠地で有名だ。知人は裏庭の奥の湖まで凍っている写真を送ってくれた。ここでは、夏はテニス三昧の日々で、時間はゆっくりと流れているようだ。
 住めば都。どこでも努力を惜しまず、その土地に溶け込み、地道に生計を立てて暮らす日本人がいる。その同胞の姿には胸を打つものがある。【萩野千鶴子】

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