札ビラが舞う選挙戦

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 シカゴ川の水が、美しい緑色に染められるセント・パトリック・デーも過ぎて、北の国にも春のきざしが感じられる3月は、予備選挙の季節でもある。
 イリノイ州では11月の本選に向けて、州知事をはじめ州司法長官、郡長官など要職の席をめぐり選挙戦が繰り広げられている。
 特に州知事選は、故ケネディ大統領の甥で、実業家のクリス・ケネディが名門出身を売りに出馬したのをはじめ、児童や高齢者福祉を謳う富豪PJプリツカー、庶民の声を代表する中流クラス出身の旗をふるダニエル・ビスなど、共和党から政権奪回を目指す民主党候補の鼻息が荒い。
 一説に、この州知事選に費やされた運動費用の合計は既に6500万ドルといわれている。春の遅いシカゴでは、花びらより一足速く札びらが空を舞う。
 機関銃のようなスピードで繰り返し流されるTVコマーシャル、毎日のように束になって配達されるレターサイズのカラー印刷ポストカード、一般家庭の庭に林立する立て看板、遠慮も無く電話回線に入り込む支持者、あるいは候補者本人の売り込みメッセージ、これらの制作、配送、設置など、全てに従事する企業や人々が何らかの形で潤っていると思えば、まんざら無駄遣いとも言いかねるが、選挙とは何とも金食い虫である。
 そのコマーシャルにしても、真実もあれば嘘も悪意のでっち上げもある。有権者はそれらを全てうのみにするのではなく、真偽を見分ける目を持たねばならない。
 1952年、第31代イリノイ州知事アドレイ・スティーブンソン氏は民主党の指名を受けて大統領選に出馬したが、候補者のTVコマーシャルなど無い頃、彼は各地を歩き回って直接自分の政策を有権者に訴え続けた結果、彼の靴底には穴が空いていたという逸話がある。人々が電波に毒されず、いま少し真摯(しんし)で、政治に情熱を持っていた頃の話である。
 さて、私の一票だが、混戦の州知事選はさておいて、選挙資金不足か、少し出足も遅れたが、終始対抗馬を非難せず、立候補の動機と自分の政策だけを訴え続けている州司法長官候補、当選の見込みの薄いR氏に進呈することにした。【川口加代子】

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